すぺしゃるしーと Ⅲ (ページ21)

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The 101st seat. ページ21

引出しに仕舞っているハンカチと

足元に置いてあるカフェラテ

交互に見て

すぐに渡せるようにしていたのに

忘れたフリして渡さなかった理由は…

『見送り、してやりたいじゃん』

ホントはスケジュールがギリギリで…

一瞬、今渡せばよかった

って思ったけど

ちょっと不安そうな顔が

どうしても気になって

見送りしたら、喜んでくれるかなぁって

そしたらさ…いいこと思いついたんだよね

今抱えてるこの仕事

中里に振ればいいじゃんって

二宮と一緒にさせれば

2人にとっても都合がいいんじゃない？

大体のプランは出来てるし

なにより、先方は中里を気に入ってて

後でシフトしていこうと話してたところだし

『ちょっとバトンタッチするのが早くなるだけっしょ』

ってことで

次の日、サッと説明をしてから

『じゃぁ、俺はこの後打ち合わせで直帰だから。あと頼んだよ』

2人の、えぇー！？って

ブーブー文句言ってるのを背中で感じながら

空港へ向かった

結構ギリギリに着いて

見つけられるか心配だったけど

どうしてなのかな…

他のヤツじゃ絶対こんなことないのに

Aだからなのか

すぐに見つけられちゃうんだよね

『A！』

「えっ！？櫻井さん…仕事は…」

『これ、返さなきゃと思って…』

「私のだ…」

『昨日、渡そうと思ってたんだけど忘れててさ』

「ハンカチ…そのまま貰って頂いても良かったのに」

『実は、いつでも返せるように。っていつも持ち歩いてたんだけど、それ返したらきっかけが無くなると思って、渡せなかった』

「きっかけ？」

『色々だよ…なんていうか、Aを誘うきっかけ。あと、そのコーヒーはこの間、見つけたんだ』

袋の中を覗いたAは、
あっ…って小さく声に出した

「これって…あのお店のですか？」

『お前好きだろ、カフェラテ』

「はい、大好きです！ありがとうございます」

緊張気味の表情に笑顔が戻った

あぁー、大好きだって

わかってる…カフェラテがってことは

だけど、言葉の破壊力やべぇ…

『そろそろ、時間だな…』

右手を出して握手を求めると

Aも右手を出した

その手を引き寄せて

自分の腕の中に閉じ込めた