四月の夜は。-12-

571. ページ21

〈...どうゆうこと..？〉

マナの言葉に、わたしは少し俯きながらあの日の事をひとつづつぽつりぽつりと話した。

言葉を選びながら話すわたしはスラスラと言葉なんか出てこなくって

だけど、マナもSHUTAも文句も言わずわたしの話を最後まで聞いてくれていた。

ただ、静かに


新年早々こんな雰囲気にしてしまって申し訳ないけど

でも

この二人だけにはちゃんと伝えておきたかった...



「....と、いう訳です。のでっ！本当に迷惑ばっかりかけた二人にはちゃんとなんかご馳走するからね！新年早々ごめんっ！おしまいっ！」

そう言って缶ビールを手にしたけどふたりはあんまり乗り気じゃなくて、しょうがないから二人の手にビールを握らせて無理矢理乾杯した。

ググッとビールが喉を通って

伝えられてなかったら胸のモヤつきを一緒に飲み込んでしまおうとゴクゴクと流し込んだ。

ビールを口から離すと飲んでない二人。

「ねぇー、この話おしまいにさせてよー！楽しく新年会しよ！言いたい事はまた今度にしてっ！お願いしますっ！」

そう言うとマナは困った様に、でも優しく微笑んで

〈言いたい事はって、Aがまだまだあるんじゃないの？...でもAが今度がいいならわたしはいつでも聞くし、いつでも泊まりにいくからね。〉

そう言ってわたしのビールにコツンッと自分のビールを当てた。

「...ありがとね。」

そう言って今度はSHUTAの方を向くと、

〔俺はおまえに言いたい事はない。飲みたいならつきあう。〕

そう言ってゆっくりビールを口へと運んだ。


「...ありがたみ。」

そう言って頷いて微笑んで、「じゃー、歌う？！」って言ったら二人とも笑ってつきあってくれた...



たくさん飲んで

たくさん話して

きっと今年も忙しくてお参りなんて行く時間もないけど

それでも

願掛けなんかしなくても

ふたりと過ごせた今日があれば

頑張れそうな気がした...


今年は大切なツアーもあって

わたしにとっては年始から集中しなきゃいけない大切なスタート

色んな事があって

歌えばどうしたって思い出して

もちろん今回のツアーでたくさん思い入れのある曲を歌わなくちゃいけない

わたしはツアーが始まるまでに

想いを思い出しに変えて歌う事ができるかな...



頑張ろう

そう言い聞かせて

楽しそうに歌う二人が居れば大丈夫と二人の背中を眺めて




また

デジャヴの様に


ソファーという幸せな魔物に取り込まれて知らぬ間にあっちの世界へと旅立っていたらしい...

572.→←570.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す