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ジェベリアは軽く目を閉じた。身体に染み込んでいる情報を思い出していた。エルシャ神が気まぐれに植え付けた記憶なのだろう。ジェベリアは自身の肉体を圧縮して、作り替えて、人の形をとる。
しかし、それは不完全だった。人間のようであるが、人間ではなかった。目は相変わらずあまた。口は裂けたまま。腕は二対。尾は少し小さくなったが、それでも地に引きずる。
「血が……血が、足りない」
ジェベリアは呟いた。それは本能から来る言葉だった。変身するには血が足りなかった。もっと殺して、もっと飲みたい。だがジェベリアはすぐには飛翔しなかった。変身した事で、僅かながら理性的な思考が容易になったらしかった。
ジェベリアは改めてガラスを覗き込む。下品で卑猥な胴体。女という概念そのもののような、性的な身体。ジェベリアは不愉快そうに唸り、そして死体の一つから服を剥ぎ取り、無理矢理着込む。男物の白いシャツ。少しサイズの大きいそれ。翼を出すために背中を引き裂いて、第三第四の腕を出すために横腹の辺りも裂いて、着込む。
垂れ流れる粘液のせいでシャツは透けて、また裂けた部分から素肌が覗く。あまりにも過激な様相ではあったが、何も着ないでいるよりはましだった。ジェベリアは渇きを満たすために、再び飛び去る。
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夜(プロフ) - 素晴らしいお話、ありがとうございます。楽しみに待っています (2021年7月22日 13時) (レス) id: 1f55a4bce5 (このIDを非表示/違反報告)
つーちゃん - ください (2021年7月4日 14時) (レス) id: 84f4461b32 (このIDを非表示/違反報告)
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