第二十九話 ノスフェルトゥ ページ30
音もなく、私を乗せたトラックが揺れる。
私はミュータントとして捕まって、いろんな事をされた。わけの分からない薬を注射されたり、頭から真っ二つに裂かれたり。でも私は死ぬ事ができなかった。
与えられる苦痛にひたすら嘆くだけだった。お姉ちゃんともずっと会えなかった。
私を苦しめる人はこう言った。
「もしキミの姉が本気でキミを助けたいと願っているなら、キミはいつか絶対に助かるよ」
ってね。
だから私は耐えた。どれだけつらくても、どれだけ悲しくても、どれだけ憎んでも、お姉ちゃんがいつか助けに来てくれると信じていたの。
でも、お姉ちゃんは助けてくれなかった。会いに来てすらくれなかった。
私はもう、涙すら流せなかった。悲しみだとか、そんなものじゃなかった。心の中にぽっかりと風穴が開いたような、そんな感覚だった。これを絶望と呼ぶのだろうか。それとも、失望と呼ぶのか?分からないけど、ともかく私はぼんやりとしていた。
やがて、私は終着点へと辿り着く。引きずり下ろされて、運ばれて行く。大きな大きな、薔薇の根元に。
ここはどこかしら。辺りをきょろきょろ眺めてみた。看板があって、そこには『羅光公園』とだけ書かれていた。
そんな風にしていると、身体が持ち上げられる。
薔薇の蔦が、私を持ち上げているのだ。そして、その蔦の根元がどんどんぱっくりと割れていく。植物には似つかわしくない、ひどく肉感的な内部をしていた。
次の瞬間、私はその中に、放り込まれて……。
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ミクミキ(プロフ) - 終わりました! (2019年11月13日 20時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
ミクミキ(プロフ) - 更新します! (2019年11月13日 19時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
ミクミキ(プロフ) - 終わりました! (2019年11月12日 21時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
ミクミキ(プロフ) - 更新します! (2019年11月12日 20時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
キューブ(プロフ) - 更新しましたー (2019年11月9日 22時) (レス) id: ed034718e4 (このIDを非表示/違反報告)
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