第十一話 ワスプ ページ12
青い空、白い壁、逃げる人。
そのいずれも、ワスプには見覚えがあった。そのいずれも、ワスプの知るそれとはまるっきり違っていた。そんな事実はこの
ワスプは本能のままに何本もの足をせわしなく動かしながら街を走り回っていた。
ふと彼の嗅覚が刺激される。おいしそうな食べ物のにおい。
長年放置され飢えていたワスプは匂いの発生源めがけて飛んでいく。
「いらっしゃい、出来立てのお饅頭はいかが?」
東区の一角で饅頭屋を営む女性が一人。
彼女が周囲に響く悲鳴に気づき、道へ眼をやると、そこには一体の奇妙な生物とも機械ともつかないようななにかがいた。それは、じっと店主を見つめている。
「…………」
「……な、なに?あなたは……」
じりじりと壁際に追い詰められていく店主。
「……オナカ、スイタ………」
「……その声、まさか、おチビちゃんなの!?」
店主は思わず怪物の傍に駆け寄った。
そっと彼の頭部へ伸ばした腕は、一瞬のうちに消え失せた。
「ッ!?どうしたの、おチビちゃん……!?」
「………イタダキ、マス?」
「おチビちゃん?何を言ってるの?」
返事はなかった。
そして数分後、彼女の店は店主と共に跡形もなく消えた。
彼女の饅頭屋など、初めから存在しなかったかのように――
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ミクミキ(プロフ) - 終わりました! (2019年11月13日 20時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
ミクミキ(プロフ) - 更新します! (2019年11月13日 19時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
ミクミキ(プロフ) - 終わりました! (2019年11月12日 21時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
ミクミキ(プロフ) - 更新します! (2019年11月12日 20時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
キューブ(プロフ) - 更新しましたー (2019年11月9日 22時) (レス) id: ed034718e4 (このIDを非表示/違反報告)
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