第三十三話 レヴィアタン ページ34
アラクネが収容されたのを確認し、今度は収容ナンバー9545サキュバスの収容室へ移動。入室の際、ガスマスクを装着する事も忘れない。
サキュバスは呼吸のたびに強い中毒性および依存性のある成分を放出している。もしこんなものを喰らったら、いくらゼロ生物であるワタシといえど無事では済まないだろう。
「9545、調子はどうだい?」
サキュバスへのインタビューはワタシが直接行う。
いくら権限があると言っても所詮ワタシはミュータント。本当に危険な相手に接するのはいつもワタシの役目だ。それでも、死ぬ事が前提の捨て駒よりはましだろうが。
サキュバスの顔は分からない。毒素の流出を極力防ぐためのガスマスクを装着させられているからだ。しかし、その口調から、とてもハイテンションである事が伺えた。まあ、彼がハイテンションでない時なんて、そうそうないのだけども。
「最高潮よ!アタシは今日も元気なの!皆幸せそうだし、楽しそうだし!ほら、お兄ちゃんもそう言ってる!」
皆、というのは、床に散らばっているこの捨て駒共の事だろう。白目を向き、全身の穴という穴から血を噴き出している。その顔は快楽に歪んでいた。
サキュバスの毒素を吸引した人間は皆こうなる。人間が一生涯で感じられるもののおよそ数億倍もの快楽が脳味噌を満たすのだ。脳味噌は強すぎる快楽により許容量をオーバーし、あっさりとその活動を停止させる。
この成分の効果を限りなく薄くする事には成功したのだが、いかんせん構成などはまったくもって分からない。テレビ販売などもやっているが、『この物質を摂取した事によるあらゆる問題について当局は一切の責任を負いません』というテロップをいつも流している。
ぼんやりとそれらを見ていると、ずい、と彼は片手に持っていた黒いミイラをワタシに見せてくる。
「お兄ちゃん、今日も元気そうでしょ!」
サキュバスがお兄ちゃんと呼ぶそのミイラを、ワタシは便宜上インキュバスと呼んでいる。こちらは呼吸などもしてないのだが、厄介な事に、全身から快楽物質を放出しているのだ。しかも、インキュバスが近くにいる時のサキュバスの物放出量はいない時のおよそ三倍に跳ね上がる。インキュバスを遠ざけるとサキュバスは生命活動を停止させるため、普段は離して保存してあるのだが。
ともかく、こんなものを押し付けられては、たまったものではない。ワタシはインタビューを早めに終わらせる事にした。
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ミクミキ(プロフ) - 終わりました! (2019年11月13日 20時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
ミクミキ(プロフ) - 更新します! (2019年11月13日 19時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
ミクミキ(プロフ) - 終わりました! (2019年11月12日 21時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
ミクミキ(プロフ) - 更新します! (2019年11月12日 20時) (レス) id: eada72cfbe (このIDを非表示/違反報告)
キューブ(プロフ) - 更新しましたー (2019年11月9日 22時) (レス) id: ed034718e4 (このIDを非表示/違反報告)
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