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Episode127 ページ40

「クッソ、眠れねぇ。」

力任せに騒動を鎮圧し本部に直帰したが、Aはまだ帰っていなかった。
最長で二ヶ月。
任務に就く前から会っていないため、もう二週間以上も顔を見ていない。

何気なく携帯を開く。
Aとの会話は、自分が送った『そうか。』という素っ気ない一言が最後。

「もっと気の利いた返し方あっただろ……。」

Aがいないことで進まなくなった仕事で疲れていた上、会えなくなったショックで頭が回らなかったのだ。
己の不器用さを恨むが、後からフォローするタイミングも逃してしまった。

珍しく酒を飲む気にもなれず、夜風にでも当たろうかと部屋を出る。

「うわっ最悪。」

扉を開けたところで、ちょうど帰宅した太宰と出くわした。

「毎晩飲み歩きかよ。節操のねぇ奴だな。」

「一人で寂しく飲んでる君よりマシ。」

そんなやり取りにも、いつも以上に苛立ちを覚え、すぐさま立ち去ろうとする。

が、何か違和感に気付いた。
太宰が入ろうとしているのは中也の部屋の隣、Aの部屋だ。

「酔ってんのかよ、お前のは右だろ。」

「知ってるよ?Aちゃんから鍵預かってるの。アルジャーノンの様子見といてって。」

太宰の手の中には確かにAのキーケースがある。
鼻唄まじりに鍵を開ける太宰に、苛立ちが募るばかり。

「何?自分が悪いんでしょ、変な意地張ってるのか知らないけど、連絡すら取れないなんて、餓鬼じゃあるまいし。」

何故、太宰がそのことを知っているのか。

疑問が顔に出ていたのだろう、太宰は勝ち誇ったような笑みでAの名前を口にした。

「Aちゃん結構苦労してるみたいだね、セクハラとかあるって言ってたし。」

「はぁ!?何でそれをテメェに相談すんだよ、どうせお前がしつこく連絡してんだろ!」

中也は自分なりに任務中の連絡は迷惑だろうかとも考えていたのだ。
しかし、太宰が連絡をとっている訳ではなかった。

「してませんー。知らないの?私ほぼ毎日Aちゃんと飲んでるんだけど。今日だってそうだし。」

中也は言葉もなかった。
Aは忙しいのだろうと思っていたのに、太宰と毎日会っていた。

呆然としている間に太宰は部屋へ入り、廊下に一人、中也だけが突っ立っている。

………やっぱり今日は深酒だ。

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noel(プロフ) - 星猫さん» いえいえ、ありがとうございます (2020年4月14日 19時) (レス) id: fd0be5fd69 (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - こちらこそすみませんです;;更新頑張って下さいね。 (2020年4月14日 19時) (レス) id: e8084d140d (このIDを非表示/違反報告)
noel(プロフ) - 星猫さん» お誘いは凄く嬉しいんですが、今年受験生でして…。コロナのせいで今が暇なだけなので、他の方と合作は厳しそうです。誘っていただいてありがとうございます。すみません!! (2020年4月13日 22時) (レス) id: fd0be5fd69 (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - あの、私と一緒に合作しませんか? (2020年4月13日 19時) (レス) id: e8084d140d (このIDを非表示/違反報告)
ぬい(プロフ) - noelさん» うれしいです! 楽しみにしてます (2020年4月11日 14時) (レス) id: 1f95c5a6f6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:noel | 作成日時:2020年4月8日 17時

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