夕焼け色に染め上げて 参【文スト】

Episode110 ページ13

長い髪が邪魔にならないように、頭の上まで持ち上げるA。

そのせいで露わになる、白く艶やかな肌。
少し力を加えるだけで折れてしまいそうな、細く頼りない首筋。

無防備にも程があんだろ……。

夜に男を部屋に招き入れ、警戒心のかけらもなく背中を見せる。
あまつさえ、服を脱がせろなどと言うのだ。

信頼されているからこそ。
その事は嬉しいのだが、これが太宰や森だったらと思うと、Aのことが心配になる。

「中也さん…？」

Aの声に、中也は仕方なく背中のリボンに指をかける。

金具を外し、ドレスが床に落ちると、白くヒラヒラとした布が幾重にも身体を包んでいる。

その全ての紐を解くと、細い腰に巻き付いたコルセットが現れる。

首領がエリス嬢にドレス着せるのにかり出される事もあるから、少しの事はわかるが、ここまで本格的なやつは初めて見るな。

布も全て上質なもので、一目で高価だとわかる。
あの男のAへの執着。

Aの腹部を締め上げるコルセットが、酷く忌々しい。

きつく編み上げられた紐を外していくと、緊張の糸が切れたように、Aが床にへたり込む。

「おい、大丈夫か？」

ブライアンを殺してから、Aはずっと上の空だった。
何処かへ意識を飛ばしてしまっているような、中也はそれがずっと不安だった。

「……もう、あの男はいないんですよね？私ここにいても良いんですよね？」

Aの口調には、もう先程までの震えはない。
以前と変わらない、はっきりとした話し方。

「あぁ。」

中也の答えを聞いたAは突然立ち上がり、満面の笑みでアルジャーノンを呼ぶ。

「よし！お風呂入るよ、アルジャーノン！」

Aの肩に飛び乗ったアルジャーノンは、中也の方を向いて、小さく鳴いた。

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