Episode92 ページ44
ジェーンが寝ていることを確認し、ドアを少し開けてこっそりとネズミを部屋へ送り込むリチャード。
それが終わると、何事もなかったかのように自室へ戻る。
彼の頭に一連の行動の記憶は残っていなかった。
室内へ入ったアルジャーノンは、一直線にジェーンのベッドへ向かい、布団の中に忍び込む。
左手の辺りに到着すると、その小指を優しく噛んだ。
気が付くとそこは真っ白な部屋。
「私、ベッドで寝ていたはずじゃ…?」
リチャードの部屋を出てから、自室に戻ったものの、モヤモヤしたままベッドで考え事をしていたのだ。
いつのまにか眠ってしまったらしいが、何故か、ここが夢ではないことはわかっていた。
「姉様!」
状況を掴めないジェーンが声の方を振り向くと、チャーリーが抱きついてくる。
「チャーリー!?どうして貴方が……ここは何処?」
一月久しぶりに会えたことに喜びを感じながらも、頭の中は疑問だらけだ。
「これは僕の異能力だよ。」
しっかりと言葉を話すチャーリー。
それを見ると、途端に涙が出てきて、どうしても止まらない。
「姉様?」
チャーリーが自分で考えて、動いて、話している。
それはジェーンにとって何よりも嬉しく、誇らしいことで、同時にとても寂しくなった。
この子はもう私を必要としてくれないのだろうか。
そう考えてしまう自分が悩ましい。
「何でもないわ。ただ貴方に会えたのが嬉しくて。」
チャーリーの身体を抱きしめると、彼の肩に乗っているアルジャーノンと目が合う。
「久しぶりね、アルジャーノン。」
チャーリーが部屋に来てくれる時も、アルジャーノンは付いてこなかった。
彼に会うのは三年ぶりだ。
「今日は姉様にお話があって来たんだ。」
チャーリーが真剣な瞳でジェーンを見つめる。
「何のお話?」
チャーリーを膝に乗せて向かい合って座る。
「お母様のお話。」
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noel(プロフ) - あやねっちさん» 嬉しいです!!ありがとうございます、これからも頑張ります (2020年4月4日 18時) (レス) id: fd0be5fd69 (このIDを非表示/違反報告)
あやねっち - 1からここまでよみました 最高でした更新楽しみにしていますね (2020年4月4日 16時) (レス) id: a393e3772d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:noel | 作成日時:2020年3月30日 9時