Episode91 ページ43
「お爺様。」
僕が声をかけるとお爺様はふり返り、信じられないといった表情で僕を凝視する。
でもお爺様が忘れているだけで、僕は今までも何度か彼の意識に働きかけたことがある。
その全ては姉様を守るため。
現実世界の僕は忘れていたりもするが、この世界の僕には、お爺様の気持ちも、僕を守るために、姉様が何をさせられているかも分かっていた。
「僕に話したいことがあるのでしょう?」
僕がそう言うと、お爺様は涙を流して崩れるように座り込んだ。
「私は、今まで散々お前に酷い事をしてきた。せめてジェーンだけでも助かればよいと、お前への仕打ちに見て見ぬふりを……!」
涙を流して僕に謝るお爺様。
お爺様が泣く必要なんてないのに。
そうさせたのは僕なのだから。
僕が地下で虐待されていることを知れば、心の優しい姉様はきっと僕を助けようとする。
そんなことを叔父様が許す筈がない。
僕がお爺様の意識を操作し、姉様に僕が受けている待遇を隠させたのだ。
「泣かないでお爺様。」
僕が言ってもお爺様はいっこうに顔を上げない。
しかし、どうして急に謝罪などしに来たのだろうか?
「何かあったのでしょう?」
そう尋ねると、我に帰ったように慌てて話し始める。
「ジェーンが母親は自 殺したと、何処から聞いてきたのじゃ。それでジェーンに話す前にもお前に話をしようと。」
叔父様にお母様が生きているという真実を聞かれる訳にはいかない。
僕をいたぶった後の叔父様は地下室に近付こうとしないから、僕のところに来たのか。
だが、僕は既に全てを知っている。
「僕のことは大丈夫だよ。」
それよりも姉様が心配だ。
真実を知れば何をするかわからない。
どうか叔父様にだけは逆らわないでほしい。
「お爺様、お願いがあるんだ。アルジャーノンを姉様の部屋へ連れて行って?僕が姉様に話をする。」
しっかりと目を見つめて僕が言うと、お爺様は深く頷き、アルジャーノンを受け取った。
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noel(プロフ) - あやねっちさん» 嬉しいです!!ありがとうございます、これからも頑張ります (2020年4月4日 18時) (レス) id: fd0be5fd69 (このIDを非表示/違反報告)
あやねっち - 1からここまでよみました 最高でした更新楽しみにしていますね (2020年4月4日 16時) (レス) id: a393e3772d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:noel | 作成日時:2020年3月30日 9時