Episode80 ページ31
「さぁ、戻ろうかジェーン。」
リチャードに手を引かれ、長い廊下を歩く。
握られた手は以前と変わらず優しく、温かい。
「お爺様……チャーリー達、知らない?」
ジェーンが恐る恐る尋ねると、リチャードは少し哀しそうな顔をした後、無理にジェーンに微笑みかける。
「お部屋で、少し話そう。」
ジェーンの部屋に戻り、入浴を終えると、ホットココアを入れたらリチャードがベッドに腰掛けて待っていた。
「怖がらなくてよい。おいで、ジェーン。」
少なくとも、記憶にある限りの祖父と変わらず穏やかな様子に安心したジェーンは、広げられた腕の中に飛び込む。
「大きくなったの。父様と母様にそっくりじゃ。」
そう言いながら、やはり暗い目をするリチャード。
「お話って?」
「よく聞くのじゃぞジェーン。まず、チャーリーは無事じゃ、安心しておくれ。」
リチャードの言葉にジェーンの緊張が一気に解ける。
我慢していた涙が溢れ出した。
「よかった、よかった!」
「ただ、可哀想なことに閉じ込められておる。私にはどうすることもできん。」
ブライアンの言っていた『ネズミ』
あれはきっとチャーリーとアルジャーノンのこと。
そうとするなら、チャーリーは檻の中。
ジェーンの表情が沈み込む。
「叔父様のせい?……ねぇお爺様、叔父様はどうしてしまったの?」
「叔父様は……お前を……守りたいのじゃ。……五年前に父親を亡くし、姿を消したお前達をずっと探しておった。」
五年前に父親を……?
ジェーンは一切聞いたことのない話だ。
リチャードの顔はジェーンから逃げる様に逸らされる。
「どういうこと!?お父様はもういないの?」
何故母親が父親の名前を聞くたびに泣きそうな顔をしたのか。
時折夜中に目を覚ますと、ジェーン達に内緒で涙を流していた理由。
興奮するジェーンを宥めるように、リチャードがホットココアを飲ませる。
「息子は五年前に死んだ。こんな仕事だからの、仕方がない事なのじゃが、幼いお前には言えんかった。」
『こんな仕事』とは何なのか。
ジェーンは父親の仕事を知らなかった。
ただ、あまり家に帰ってこない人だとは思っていた。
呆然とするジェーンにリチャードが告げる。
「お前の父親はマフィアのボスだった。私の後を継いでな。今はブライアンが代わりを務めておる。」
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noel(プロフ) - あやねっちさん» 嬉しいです!!ありがとうございます、これからも頑張ります (2020年4月4日 18時) (レス) id: fd0be5fd69 (このIDを非表示/違反報告)
あやねっち - 1からここまでよみました 最高でした更新楽しみにしていますね (2020年4月4日 16時) (レス) id: a393e3772d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:noel | 作成日時:2020年3月30日 9時