Episode71 ページ22
「この先へは行かせないよ。」
太宰が入った部屋の中には、誰の姿もない。
ブライアンは既にAを連れて、奥の部屋へと行ってしまったのだろう。
姿の見えない神島の声だけが聞こえる。
「実に便利な異能だね。それに生憎、私は中也のような野性の勘を持ち合わせていないのだよ。」
太宰の異能力、『人間失格』も神島の身体に触れなければ意味がない。
「君にはここで死んでもらうよ。」
神島のその言葉を最後に、室内には太宰の呼吸音しか響かなくなる。
突然、左肩に衝撃が走り、じわじわと熱が広がる。
銃で撃たれたのだ。
銃声まで消せるのか、厄介だね。
聴覚にも頼れない、これは…。
立ち尽くす太宰に、神島の打撃が襲う。
太宰は懐に手を入れ、何かを探す。
そしてニヤリと笑みを浮かべた。
「私は女性の匂いに敏感でね。」
突如脈絡のない話を始める太宰。
「数多の女性と関係を持ってしまうから、香水で見分けることもあるくらいだよ。」
部屋の右側から、甘い香りが漂う。
太宰の右手が素早い動きで空を掴んだ。
「異能力【人間失格】」
腕を掴まれた神島が姿を現す。
太宰に捕われたのは銃を持った側の手。
神島は咄嗟に、左の拳で太宰の鳩尾を殴る。
「クハッ……！……ふふふ、ナメクジのパンチにも及ばないね。」
殴られながらも決して手を離さない太宰。
「如何して姿が消えない！？」
自らの異変に焦りを見せる神島。
「私の力は異能力の無効化。姿の見える君の攻撃なんて、速さも威力も、あのちびっ子以下だよ。」
神島の蹴りを悠々と躱す。
そして太宰の拳銃が神島のこめかみを捉えた。
神島は奥歯を噛み締める。
「何故、俺の居場所がわかった…！？」
「これだよ。」
太宰が懐から見えるのは何かのボタン。
「或る人物に悪戯した時の玩具が残っててね。Aちゃんに渡していたのだよ。」
神島が自分の服を見ると、上着のポケットに染みができている。
「香水を仕込んだ小型の爆弾さ。」
神島がAの服を脱がせた時。
恐らくAがこっそりと忍ばせたのだろう。
神島の能力を把握した上で、太宰がとっていた対策。
中也への嫌がらせが、思わぬところで功を為した。
「さぁ、君の負けだ。」
銃声と共に血飛沫が壁に染みをつくる。
「しかし、こうも品のない匂いは私も好みじゃないのだけれど。」
神島の脈が途絶えたのを確認し、太宰は部屋の奥へと歩みを進めた。
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noel(プロフ) - あやねっちさん» 嬉しいです！！ありがとうございます、これからも頑張ります (2020年4月4日 18時) (
レス) id: fd0be5fd69 (このIDを非表示/違反報告)
あやねっち - 1からここまでよみました 最高でした更新楽しみにしていますね (2020年4月4日 16時) (レス) id: a393e3772d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：noel | 作成日時：2020年3月30日 9時
