Episode70 ページ21
ガラスの割れる音と共に、船内に飛び込む中也。
太宰は床に投げ捨てられる。
「Well, well…… I didn't know that stray dogs have sneaked in this ship!(おやおや……。まさか野良犬がこの船に忍び込んでいたとはね!)」
声の主は、ソファに座る蛇のような眼をした男。
言葉とは裏腹に、余裕そうな顔をしている。
そして、その腕の中には、
「A……!」
見慣れないドレスに身を包み、男の膝上で死んだように眠るA。
「A…?誰だいそれは?ここにいるのは私の可愛い小鳥。薄汚れた犬に渡すような物は何もないよ。」
ゴミを見るような眼差しの男に言葉を返すのは太宰。
「ブライアン・ウォーレス。時計塔の従騎士に並ぶ英国最大組織、マフィア・イエロースネークの四代目ボス。合っているかい?」
男、ブライアンは感心したような笑みを漏らす。
「ほぉ。日本の小さな組織如きが、よく嗅ぎ回ったようだ。猫ではなくドブネズミかい?」
太宰の言葉に誰より動揺していたのは中也だ。
ボスだと…!?
なんでそんな上層部がここに。
客船を見た時から違和感を感じていたが、敵のAに対する執着は並みのものではない。
「せっかく用意した鳥籠から逃げ出すなんて、悪い子だ。今度は……一生離さない。」
Aを見つめるブライアンの目は捕食者そのもの。
蛇のような舌が色味を失ったAの頬を舐めあげる。
……ッ!
ブライアンに襲い掛かった中也の身体は横から現れた大男によって止められる。
「そこを退きやがれデカブツ。」
自分の目線より上にある男の顔を睨みあげる中也は、瞳孔が開ききっている。
しかし中也の拳の勢いを全身で受け止めた男は、既に意識を失い、そこに立っているだけだ。
仲間の異変に気付いた男達が中也の周りを取り囲む。
「ネズミの始末は任せた。私はゆっくり、愛しの小鳥と戯れていよう。」
中也の相手を部下に任せ、奥の扉へ進むブライアン。
その後ろに神島が続く。
「おい、太宰!」
「わかっているよ。」
中也もこの人数相手にはAの後を追う事はできない。
せめて一人で片付ける。
太宰は閉まりかけの扉に滑り込んだ。
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noel(プロフ) - あやねっちさん» 嬉しいです!!ありがとうございます、これからも頑張ります (2020年4月4日 18時) (レス) id: fd0be5fd69 (このIDを非表示/違反報告)
あやねっち - 1からここまでよみました 最高でした更新楽しみにしていますね (2020年4月4日 16時) (レス) id: a393e3772d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:noel | 作成日時:2020年3月30日 9時