【ワールドトリガー】独善系、黒兎少女。【空閑遊真】

◆黒兎16羽目。 逃走◆ ページ27

　
「ぁ……」

言い過ぎた。言い過ぎだ。
何て事を言ってしまったんだ。

「……………」

先輩は何も言わず、ただ私を見ていた。
ただ、その時の目は、私は見たことがない
感情に染まっていた。

どうか、嘘を見付けてよ。
いつもみたいに、言っちゃってよ。
……どうしてそんな目で私を見るの。

「………帰って、下さい……」

私は消えそうな声を絞り出した。
泣き出しそうで、見られたくなかった。
自分のダメな所は、見られたくない。

「……あぁ、じゃあ、な」

先輩は渇いた声でそう言うと、
生きる気がないみたいに私の部屋を
出て静かに扉を閉めた。

「…………っ、う、ぅう、なによ、
ばかっ、ひっ…く…ばかぁあぁぁ……!」

涙も泣き声を止める事ができず、
止めようともせず、私はわんわん泣いた。
冷えた空気と、氷みたいな声が
私を凍えさせた。






思うだけ泣いて疲れて、
泣きすぎて頭が痛くなった。

冷たさだけが残った部屋の
居心地は最悪で、私は適当に着替えて
髪の毛は括らずにぐしゃぐしゃのまま
鍵も閉めずに家を飛び出した。

何を思ってわざわざ飛び出したのかは
知らない。
ただ、さっきと同じ状況とできるだけ
反対の状況にしたかった。

嫌われた。嫌われた。嫌いになられた。
嫌いなんだ。嫌いになられた。嫌われた。

自己嫌悪。自己嫌悪。自己嫌悪。
崩れた関係。その原因。喧嘩の原因。
事故の原因。事故原因。自己嫌悪。
自己嫌悪。事故原因。

冷たい。寒い。冷えてる。逃げたい。
冷めてる。忘れたい。氷みたい。辛い。

逃走。迷走。逃走。逃走。
逃走逃走逃走迷走迷走迷走逃走瞑想
逃走迷走逃走瞑想迷走逃走。

やめて。やめて、やめて。
止めてやめてやめて止めてヤメテ
辞めてヤメテヤメテ病めて罷めて
やめて病めてやめてヤメテ止めて。

後ろ向きな言葉だけが脳内を
支配して、走って走って、呼吸が乱れて、
疲れて走って、止まらなくて、
それでも走って、視界も歪んで、
息が止まりそうで、倒れそうで。

意識さえ曖昧になってきて、
夢を見てるのかな、白昼夢かな。
なんて思いながら、縺れた足の性にして
意識を手放した。

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