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◆黒兎13羽目。 仔兎◆ ページ23

 
「……ここ、は……」

何だか頭が痛い。
ゆっくりと上体を起こしながら
辺りを見る。

そこにはアルバムにあった写真と
同じ見た目の、そう、幼い頃の私と……。

「ゆめはー!」

「あ、どうしたの?A」

夢葉だ。
ふわっとした茶髪に、青空みたいな目。

え?どうして?ここは何処?
現実、違う。夢?夢なの?

いやだ。この夢は嫌だ。
見たくない。気付きたくない。
私は、私は何も知らないもの。

「やめて、お願い」

掠れた声になった。
まるで本を飛ばし読みするみたいに
場面は進む。

そう、あの日。もうあの日。

いつも通りの親からは存在しないみたいに
扱われて、夢葉だけが私を見て
くれていた。

柔らかい笑顔で、私を大事にしてくれた。

私の世界に存在していたのは、
夢葉だけだった。

「夢葉、何する?」

「んー、じゃあ散歩しようか」

学校はあまり行ってなかった。
何でだっけ、多分夢葉がいるときは
行かなかったな。

「夢葉、夢葉の“魔法”、どうして皆に
教えないの?」

「それはね、Aとの秘密だからよ」
「えへへ、夢葉大好きー!」

そう、次の瞬間の事だ。
私と夢葉は……。

押し寄せる人の波。それを追う怪物。
壊れていく建物。

「夢葉……っ!」
「A!!」

夢葉は私の手をぎゅっと握り、駆け出した。
でも、情けないな大人たちが
私達を突き飛ばした。

人に踏まれる。痛い。
涙が一杯こぼれた。夢葉は私を庇うのに
精一杯だった。

暫くして人が少なくなり、私達は
起き上がった。
もう怪物はすぐそこだった。

「ひっ、ゆ、夢葉ったすけ……」
「危ないっ!!」

私の小さな声に夢葉の叫びが重なった。
夢葉は最後に何かを言った。
一瞬視界が真っ黒になって、次に
目に飛び込んだのは……。

「あ、ぁ………っ……!!」

声にならない声を上げた。
真っ二つに切られた怪物と、それが
最後の力を振り絞って貫いた夢葉だ。

最初はキラキラした粒子が舞っていたが、
すぐ夢葉からは赤黒いモノで汚れた。

「夢葉ぁぁぁ!!」

すぐさま駆け寄って夢葉の手をとる。
もう冷たいよ。

「げほっ、A……ごめ、ね……、
わたし、ずっ…と、…傍に……」

「夢葉!いつもみたいに笑って!
ねぇ!ねぇぇ!!どうしてよなのよぉおぉぉ!」

夢葉は最期、柔らかいあの笑顔を浮かべた。

「A……、まほ、う……あなたに……
そして、……っ……ず、と……傍にいる……
から、ね……わら、て………?」



「夢葉……っ!」

□ウサギ小屋□→←■ウサギの巣穴■



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設定タグ:ワールドトリガー , 空閑遊真 , ワートリ   
作品ジャンル:恋愛
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魅雹 - 黒兎十六羽目逃走。 で泣きました。素晴らしい作品有難うございます (2018年12月7日 20時) (レス) id: 8e02e0511a (このIDを非表示/違反報告)
神月幽暗 - あああ!す、すみません!SEであってました!聞き間違い・・・?うう、すみませんでした!!本当にすみません!! (2016年8月29日 16時) (レス) id: 1c25bc45fb (このIDを非表示/違反報告)
神月幽暗 - はじめまして、幽暗です。第八話目のサイドエフェクトで間違いがあります。SEではなくSFです。私の小説もぜひ・・・。 (2016年8月28日 22時) (レス) id: 1c25bc45fb (このIDを非表示/違反報告)
ルピナス(プロフ) - 命瑠さん» はい!ちゃんと遊真君でますよニヤ(。-∀-)ニヤ (2016年2月5日 19時) (レス) id: 82e1e84f5b (このIDを非表示/違反報告)
命瑠 - リク消化ありがとうございます!…これの続きってやりますか?(wktk) (2016年2月5日 6時) (レス) id: c43154f71d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ルピナス | 作成日時:2015年12月12日 20時

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