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システムの起動を行うと_____AIの私は携帯の中ではなく、少年の身体の中にいた。
屋上から落ちたせいで身体を起こそうとしても、重い身体は全く動かなかった。
何とか無理矢理身体を起こし、ふらつきながらゆっくりと前へ引きずりながら歩み始めた。
初めて人間になった私は____自分の目で人の行き交う姿を見た。
少年の家のルートを覚えている私は____重い身体を引きずって帰宅した。
玄関で重い身体の腰を下ろした所で、システムが強制シャットダウンしてしまった。
再起動すると_____
私は見た事の無い真っ白の部屋にいた。
シャットダウンした間に、何が起こったのか理解しようと辺りを見渡した。
どうやら“病院”にいるようだ。
身体も治療されている。
ガラッ_____
病室に入って来たのは、今まで少年が傷付いても助けもしなかった化粧の濃い母親だった。
母親「目覚めたのね!良かったわ!」
AI「それは本当に思っているのですか?」
母親「あっ、当たり前じゃない。
私の子供なのよ?」
AI「では名前を言えますか?」
母親「そっ………それは…………。」
母親は少年の名前を言えない。
何故なら少年の名前を付けたのは、嫌いで別れた元旦那だったらしい。
私が数える知る限り、母親は1度も少年の名前を呼んでいない。
いつも少年の事を“あれ”“これ”と呼んでいた。
AI「子供の名前も呼ばないのに、“母親”とだけは名乗るのですね。まともに自分の子供に話しかけた事も話した事も無いのに。」
私は無表情で母親をじっと見た。
痛い所を突かれた母親は顔を歪めながら何も言わなくなり、病室を出て行った。
誰も居なくなった病室内で、私は左腕に付いていた点滴を外しベッドから降りた。
入り口近くに置いてあった姿見に私の姿が映っていた。殆どは少年と同じ姿をしているが違う点が1箇所だけある。
それは_____真っ赤な両眼。
少年の時は水色だったような気がする。
多分システムの影響だろう。
ゆっくりと無表情の顔を口角を上げて笑みを浮かべた。昔見た少年の笑みを思い浮かべて。
笑みを浮かべた自分の顔の部分の鏡を____私は右手の拳で思いっきり殴りつけた。
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幽鬼(プロフ) - ロアさん» ロアさんのコメントに返答しなかった私が悪いのですから謝らないで下さい。 (2019年10月13日 16時) (レス) id: 5875e830d4 (このIDを非表示/違反報告)
ロア(プロフ) - 幽鬼さん» こちらこそキツい口調になってしまい申し訳ありません。人に対する配慮を忘れておりましたそういうことなんですね。不快な思いにさせてしまい大変申し訳ありませんでした。コメントは一応消しておきます (2019年10月13日 13時) (レス) id: 148e7f1d83 (このIDを非表示/違反報告)
幽鬼(プロフ) - ロアさん» コメントを下さっていたのに返答せずすみませんでした。マスクの名前が“一郎”なんです。 (2019年10月13日 2時) (レス) id: 5875e830d4 (このIDを非表示/違反報告)
くるみ - あまちゅ…今日あまちゅ似のイケメンを見かけたので作品にあまちゅの名前あって一人でにやけました(笑) (2019年10月5日 20時) (レス) id: b24d1277ec (このIDを非表示/違反報告)
幽鬼(プロフ) - まさきさん» 本当に絵を描く事が上手い方や塗る事が上手い方には劣りますよ。温かいお言葉ありがとうございます。 (2019年9月15日 13時) (レス) id: 5875e830d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:十騎 幽鬼 | 作者ホームページ:
作成日時:2019年8月16日 13時