墜落。 ページ4
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突然の暴露に俺はびっくりする。
「……え、何で?親は?家は?どうやって過ごしてるの?」
『ちょっと、一気に聞かないでくださいよ。私人とお話するの本当はかなり苦手なんで』
初めて出逢った未知の生物に俺はかなり興奮している。
変な意味じゃなくて、普通に興味が俺を唆る。
"この少女のことを、もっと知りたい。"
脈打つ心臓がダイレクトにそう伝えてくる。
「…Aさん、はいつもここに来てるの?」
『はい。…あ、でも雨の日に限りますが』
濡れた髪をそっと耳にかける仕草はとても色っぽくて、でもそれでいてどこか弱そうで。
俺はAさんのその返事にかなりの歓喜を覚えた。
「……俺も!俺も雨の日ならいつもここにいるよ!」
────いや、本当は分からない。
必ず雨の日にここに来れるかって言われたら実際は違うかもしれないし、それは必然的に自分が部活に行かないということを指す。
なのに、俺はそう返事をしてしまった。
……彼女の細くて白い腕をガッツリと掴んだまま。
『そうなんですね。じゃあもしかしたらまたここで会えるかもしれません』
そう微笑みを向けられたらもう今の発言を撤回することはできない。
彼女はパタリと分厚い本を閉じ、ゆっくりとベンチから立ち上がる。
「えっ、もう行っちゃうの」
────まだ30分くらいしか話せてないよ?
自分の口からついて出た思わぬ言葉にまたびっくりする。
『はい。あまり長く居られないので。じゃあ、また雨が降ったらこの場所で会いましょう。さとみさん』
ひらり、と黒いワンピースをヒラつかせて華麗にターンを決める彼女。
────なんて美しいのだろうか。
俺はこの歳にして初めて一目惚れというものを経験してしまった。
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眠民。 - 颯桜さんの作品は、涙が出るほど切ないお話が沢山あるけれど、でもその涙って美しいと思うんですよ‥(語彙力)今回のお話も泣きました!!笑 (2月8日 18時) (レス) @page36 id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - 余白の落書き。さぶさん» 神だなんて恐れ多い☺️楽しんで頂けて幸いです (2023年1月16日 3時) (レス) id: f6025f27a2 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - ネコ日和。さん» ありがとうございますとても嬉しいです😢🫶🏻 (2023年1月16日 3時) (レス) id: f6025f27a2 (このIDを非表示/違反報告)
余白の落書き。さぶ - え、神ですか……?神作をありがとうございます! (2022年8月19日 19時) (レス) @page35 id: 74c80fc40d (このIDを非表示/違反報告)
ネコ日和。 - 好きすぎて、題名の一部を名前にとりいれちゃいました。 (2022年8月2日 15時) (レス) id: 18b130b5d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:颯桜 | 作成日時:2020年5月8日 21時