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真実。 ページ26




全てを知ってしまった今、自分に怖いものなど何も無かった。


ただ目の前の彼女は猫のような仕草で────


いや、猫なのだろうけど


彼女は下手くそに涙を拭っていた。






スマホを知らなかったり、箸を使うのが苦手だったり、いちいち小さなことで感動している君を見て俺はその時点で気づいていなければいけなかった。




「クロ、おいで」


そういえば君はふんっと起こった顔をして


『クロじゃない、私は黒澤 A!』


意地っ張りなところを見せる。



相変わらず彼女を包み込む光のベールはふわふわと浮遊している。




『私が知ってるさとみさんはもっと幼くて弱い子だっのに、急に大きくなっちゃってびっくりした』


「ちょ、お前いつの話してんだよ」



目の前の少女は確かに人間なのに。
君は俺の愛した猫なんだよね。信じられない。



『私ね、貴方が私を見つけても知らん顔して撫でてくれなくなった時、怖かったの』





───────忘れられた、と思って。




俺の手に自分の手を絡め、ぎゅっと握られる。
やはりその手は今もまだ冷たいのだ。




『でもさとみさんの家にちゃんと(クロ)の写真が飾ってあって安心した』


「…ごめんな」


俺はいつだって君の存在を忘れたことは無かった。

だがそれと同じように、君を探す時間も君と遊ぶ時間も俺には無かった。

ただ小中高とだんだん大人になるにつれて時間という貴重なものを奪われたから。






──────これが、"雨降りの日は世界が狂う"
という言い伝えの証拠ならば君は。




「Aさんは梅雨が明けたらもう人間の姿にはなれないの…?」


少女の悲哀的な瞳が言葉よりも全てを物語っていた。



そうか。そうなのか。




君は雨が止んでしまえば君は言葉も交わせないネコに戻るんだ。



────だったら!




「ねぇ!ネコに戻ったら俺と暮らそう!?それなら俺が突然家に女の子を連れ込むより自然な流れだし良いと思うんだけど!」




歓喜に満ち溢れた俺は彼女の肩をがっしりと掴み、
早口で提案する。



有無を言わせない。
Yesしか言わせない。



どちらにとってもメリットだと思う。




なのにどうして、




俺が良いと思ったことは
君にとってはダメなんだ。



神様はどこまでも俺に意地悪だ。





『私、もう生きられないの』




「…え?」



雨が煩かった。




そして、また彼女自身にそんな辛い言葉を
吐かせてしまった自分を酷く責めた。

生命。→←愛猫。



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作品ジャンル:恋愛
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眠民。 - 颯桜さんの作品は、涙が出るほど切ないお話が沢山あるけれど、でもその涙って美しいと思うんですよ‥(語彙力)今回のお話も泣きました!!笑 (2月8日 18時) (レス) @page36 id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - 余白の落書き。さぶさん» 神だなんて恐れ多い☺️楽しんで頂けて幸いです (2023年1月16日 3時) (レス) id: f6025f27a2 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - ネコ日和。さん» ありがとうございますとても嬉しいです😢‪🫶🏻 (2023年1月16日 3時) (レス) id: f6025f27a2 (このIDを非表示/違反報告)
余白の落書き。さぶ - え、神ですか……?神作をありがとうございます! (2022年8月19日 19時) (レス) @page35 id: 74c80fc40d (このIDを非表示/違反報告)
ネコ日和。 - 好きすぎて、題名の一部を名前にとりいれちゃいました。 (2022年8月2日 15時) (レス) id: 18b130b5d8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:颯桜 | 作成日時:2020年5月8日 21時

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