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スコップ。 ページ11



「スコップ落ちてた、なんか懐かしくない?」


会話が欲しくて適当に彼女にそれを見せてみる。


スマホを知らない無知すぎる彼女だったが
さすがにスコップというものは知っているだろう。



そう思ってAさんの顔を伺うが、やっぱり的を外したか。



『すこっぷ…』



彼女は一体何なら知っている?
あんな分厚い本はそつなく読めるのに何故。


「小さい頃使わなかった?ほら、こうやって」



俺はそれを使って砂を掘ってみせる。



「これで砂の山とか作ったりしたでしょ?小さい頃」




誰もが経験するであろう砂場遊び。

絶対分かる、そう思って話したんだけど…





『さとみさん、このお話はやめましょう?』


彼女の青い瞳からは透明な雫が零れていた。
それは雨のように酷く透明で輝いていた。




「A…さん?」



涙を拭おうと手を伸ばせばそれは拒まれ逆に強く抱きしめられた。



「!?」




スコップに何か嫌な思い出でもあったのだろうか。


訳もわからずただ彼女を落ち着かせるべく俺は背中を優しく撫でた。



スコップはそこら辺に投げ捨てた。



その一連の出来事で俺は
スコップを酷く恨んだ。




スコップなんてこの世になくてもいいじゃないか。



さっきまでそこに

"生活に欠かせないもの、存在意義がある物"


として俺に認められていたスコップは、たった今Aさんによって




"無くてもいい物、存在意義は大してない物"





というジャンルに括られてしまった。




あれだけ鮮やかだったピンク色も
今では酷く霞んで見えた。

心覚。→←雨女。



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作品ジャンル:恋愛
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眠民。 - 颯桜さんの作品は、涙が出るほど切ないお話が沢山あるけれど、でもその涙って美しいと思うんですよ‥(語彙力)今回のお話も泣きました!!笑 (2月8日 18時) (レス) @page36 id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - 余白の落書き。さぶさん» 神だなんて恐れ多い☺️楽しんで頂けて幸いです (2023年1月16日 3時) (レス) id: f6025f27a2 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - ネコ日和。さん» ありがとうございますとても嬉しいです😢‪🫶🏻 (2023年1月16日 3時) (レス) id: f6025f27a2 (このIDを非表示/違反報告)
余白の落書き。さぶ - え、神ですか……?神作をありがとうございます! (2022年8月19日 19時) (レス) @page35 id: 74c80fc40d (このIDを非表示/違反報告)
ネコ日和。 - 好きすぎて、題名の一部を名前にとりいれちゃいました。 (2022年8月2日 15時) (レス) id: 18b130b5d8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:颯桜 | 作成日時:2020年5月8日 21時

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