雨の日、ネコ日和。【さとみ】

心覚。 ページ12

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｢ごめん、もしかしてスコップに何か嫌な思い出が｣

『違うんです、ほんとに大丈夫だから』



俺の言葉を遮り否定したAさんはなんだかどこか俺に似ている気がした。



────────そうだ、



なーくん達が悩み事はないかと俺を心配してくれた時に自ら放った言葉と同じなんだ。



その言葉を使ったことがある者として言わせてもらえばこの発言にはこういう裏の意図が含まれる。



"これ以上私の中に立ち入ってこないで"




境界線を張られたと言っても過言ではない。


俺は大事な親友にこんなことをしてしまったのだと
今更ながら第三者のように思った。




『私、スコップ使ったことないんですよ。昔小さい頃大好きだった男の子が遊びに使ってた所を見たくらいしか…』




"大好きだった男の子"



というワードに妙に反応してしまうが過去の話だ。



自分にだって小さい頃好きだった子はいるし何ら変わったことではない。





『あとあの時に』

｢あの時…？｣


『あ、やっぱりなんでもないですよ。なんか昔母親と公園で日向ぼっこした記憶が蘇ってきただけなので』



涙を自分でゴシゴシ雑に拭えばにこっとここ数日雲に隠れて見えない太陽を思わせるような輝かしい笑顔を見せた。



｢……大丈夫？辛くない？｣


Aさんはなんだかぼんやりと悲しそうな表情でまた俺に微笑んだ。






消えてしまいそうな儚い笑顔だった。

30分。→←スコップ。

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