嫉妬。 ページ29
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『ほんと?私ちゃんと綺麗?』
「綺麗だよ。Aは綺麗すぎて壊れないかすげぇ心配」
この少女の儚さは上手く言葉にできない。
美しいのだ。ただ、美しい。それだけの話。
『そっかぁ。なら良かった。…でも、これから先、私の居なくなった世界でさとみが色んな女の子と出会って恋に落ちていくのかって思うと妬けちゃうなぁ…』
ストレートに甘い毒を吐かれた。
独占欲というものだろうか。
彼女の胸元に光る俺があげたネックレスが鈍く光る。
「俺は今のところ恋する予定は無いよ。お前以上の女見つけられる気がしねぇもん」
『何よ、予定って。…でもちゃんと私の事女って言ってくれるの好き』
そうやって君は不貞腐れるけど思ってるより俺はAさんに依存していた。
きっと、今後将来こんな美しい恋は出来ないと思う。
「ほら、今のうちにつけとけよ」
そう言って俺は昨日の夜と同じように鎖骨まで着ていた服を引っ張った。
『……っ!』
「何?今更恥ずかしがってんの?きすまーく。好きなだけつけていーよ」
ちくりとした柔らかな幸せな痛みで身体が満たされる。
それが幾つ付けられたのか、俺には分からない。
お互い無数の赤い華を咲かせ、その姿を見た時酷く満足した。
『消えないキスマークがあればいいのに。それかさとみさんが他の女に目移りしない魔法が欲しい』
可愛いことを簡単に吐く少女はとても色っぽかった。
すると、相変わらず光のベール纏った彼女の背後に
白毛並みの成猫が現れた。
にゃあ、と一声鳴くとゴロゴロ喉を鳴らしAさんに擦り寄った。
『…あ』
「…?」
少女が子猫を抱いた時、Aさんの身体は段々と透明になりつつあった。
直感的に思う。
─────彼女は今度こそ跡形もなく消えてしまう。
「…行かないでっ!」
慌てて彼女の手を掴み固く握る。
そんな俺を見てなのか少女の腕に収まった白い成猫は俺にシャァッ!と威嚇する。
「なんだよお前可愛くねぇな…!」
白猫を睨みつけべーっと舌を出せば困ったようにAさんは笑った。
『この白猫さんは私の
「!?」
……あぁ、そっか。
この時俺は冷静になって思う。
君は人間の世界を中心に生きてきた訳では無い。
ネコとして生きた時間の方が圧倒的に長いんだ。
情けないが俺は旦那と呼ばれた白猫に酷く嫉妬してしまったようだ。
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眠民。 - 颯桜さんの作品は、涙が出るほど切ないお話が沢山あるけれど、でもその涙って美しいと思うんですよ‥(語彙力)今回のお話も泣きました!!笑 (2月8日 18時) (レス) @page36 id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - 余白の落書き。さぶさん» 神だなんて恐れ多い☺️楽しんで頂けて幸いです (2023年1月16日 3時) (レス) id: f6025f27a2 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - ネコ日和。さん» ありがとうございますとても嬉しいです😢🫶🏻 (2023年1月16日 3時) (レス) id: f6025f27a2 (このIDを非表示/違反報告)
余白の落書き。さぶ - え、神ですか……?神作をありがとうございます! (2022年8月19日 19時) (レス) @page35 id: 74c80fc40d (このIDを非表示/違反報告)
ネコ日和。 - 好きすぎて、題名の一部を名前にとりいれちゃいました。 (2022年8月2日 15時) (レス) id: 18b130b5d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:颯桜 | 作成日時:2020年5月8日 21時