溺愛。 ページ19
・
予測不能な事態が起こると逃げたくなる。
強がりなくせに案外臆病でビビり。
でも押しには弱い。
────────ねぇ、そうなんでしょ。
「逃げないで、ちゃんと聞いて」
俺は何故か昔からAさんのことを知っている気がしてならない。
だから君の弱点だってなんだって知っている気がするんだ。
君は、直接向けられた好意が少し苦手でしょ。
『好きって何ですか。からかい?だって私たちまだ出会って───』
「俺とAさんは昔から何処かで既に出逢っている気がする。出逢うべくしてあの公園で
根拠の無い言葉をつらつらとあたかも本当かのように述べる。
「それに…Aさんも、俺のことどうしようもない位好きでしょ」
べっと舌を出す俺を我ながら意地悪だと評価した。
今更ながら自分のナルシスト的発言に赤面しそうになる。
「…好きだから、こうやって俺にすり寄って来てくれるんでしょ?」
天然水の擬人化みたいな君が遊び目的で男の家に上がるだなんて到底思えない。思いたくない。
何か目的があってここに来るんでしょ?
『……ばぁか、なるしすと』
ひらがな喋り。絶対此奴ナルシストの意味わかってない。
そんな君も愛おしいよ。
苦しくなるよ。
愛されたいし愛したい。
「ねぇ、俺のこと、好き……?」
俺は大好きだよ。愛してる。
後ろからきゅっときつく抱き締める。
同じシャンプーの香りが胸を擽る。
猫撫で声で愛を囁けば。
同じようにお得意の甘い声で愛を愛で返してよ。
『私の方がさとみさんのこと…っ!』
"大好きだっ!!!!!!"
耳まで真っ赤にして全身を震わせるAさん。
伝わった。
十分すぎるほど伝わった。
心臓が焼け砕けてしまうほど熱を持った。
やべぇ。めっっっっっちゃ好き。
自分が本来持ちえているボキャブラリーをどんどん手放していく。
海に沈んでいくような、愛に溺れて泥酔していくような、
そのまま愛の
そんな深い微睡みの中で。
「ごめん我慢できない俺」
くるりと力任せに、でもふわりと彼女を痛めつけないよう優しく床に押し倒す。
恥ずかしさが故に目を合わせてくれないAさんの
全てが愛おしいんだよ。
「ちゃんと俺を見て」
互いの愛の元交わされたキスはこの世界で俺しか味わえないものだと確信する。
234人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
眠民。 - 颯桜さんの作品は、涙が出るほど切ないお話が沢山あるけれど、でもその涙って美しいと思うんですよ‥(語彙力)今回のお話も泣きました!!笑 (2月8日 18時) (レス) @page36 id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - 余白の落書き。さぶさん» 神だなんて恐れ多い☺️楽しんで頂けて幸いです (2023年1月16日 3時) (レス) id: f6025f27a2 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - ネコ日和。さん» ありがとうございますとても嬉しいです😢🫶🏻 (2023年1月16日 3時) (レス) id: f6025f27a2 (このIDを非表示/違反報告)
余白の落書き。さぶ - え、神ですか……?神作をありがとうございます! (2022年8月19日 19時) (レス) @page35 id: 74c80fc40d (このIDを非表示/違反報告)
ネコ日和。 - 好きすぎて、題名の一部を名前にとりいれちゃいました。 (2022年8月2日 15時) (レス) id: 18b130b5d8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:颯桜 | 作成日時:2020年5月8日 21時