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私の咀嚼ペースに合わせて食べさせてくれた彼。時には「まだ食えるか」と聞きながら、何ならリンゴ味のゼリーまで食べさせてくれてバッチリお粥もゼリーも完食した。
『ご馳走様でした。⋯美味しかったです』
「⋯ん、どーも」
無言で片付けをする彼を覗き見て、あることに気が付いた。
『私を助けてくれたの、貴方ですよね』
「⋯⋯え、」
『⋯帽子、同じ』
「!あぁ、」
さっきから何となく見たことある様な気はしていたが、あの時、閉じかけていた視界に映った人影は、同じような形の帽子を被っていた気がする。
『ありがとう、ございます』
「⋯おう」
何度目かのお礼を口にすると、じっと私の顔を見つめたであろう彼は、トレーを置いて、今度は事情聴取ばりの雰囲気の中質問をしてきた。
──────何が目的だ?と。
は、?と情けない声が出てしまった。彼の声色はいたって真剣そのもので、あー⋯と、言葉を選びながら発言した。
『⋯別に、特に何も』
「は?」
やっばしくった。
明らかに言葉を選ぼうとした意味すらないものだ。威圧感のある「は?」にぴくり、と肩を揺らして、彼の言葉の続きを大人しく聞く体制に入った。
「俺らもまぁそこそこ名の知れた海賊だ。あぁやって溺れたふりでもして同情を誘って、漬け込んだ隙を狙って略奪か、殺しでもするつもりだったんじゃないのか?
⋯それこそ海賊か、海軍のスパイの可能性だってある」
──────“海賊”に、“海軍”??
近代では耳にしない単語だ。何のことか理解はできないが、とりあえず後で考えるとして。色々伝えたいことはあった。
海賊でも海軍でもない。略奪も殺しもするつもりはない。溺れていたのだって不可抗力だ。
けど、それよりも口をついて出た言葉は、彼の動揺を誘うには十分すぎるほどだった。
『──じゃあ、何で私のこと助けたんですか』
「⋯⋯は、」
『信用できないなら、そのまま海に放っておけば良かったじゃないですか』
「⋯そ、れは、船長命令で、」
『一度海に潜って、探したけど魚にでも食われた。とでも報告すれば良かった。丁寧に手当てに、食事まで頂いて⋯ありがたいと思っています。
⋯でも、そこまでして疑っていたのなら、なぜ?』
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ちあき(プロフ) - shionさん» 初コメありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです!!続編までもう少々お待ちください!! (2022年9月29日 8時) (レス) id: 2fefdf0ec1 (このIDを非表示/違反報告)
shion - 初コメ失礼します!!読んだら本当に止まらず、すっごく面白くて!!もっと早くに出会っていたかったですっ…!続編ずっと待ってます!! (2022年9月29日 1時) (レス) @page50 id: f0db8db4d6 (このIDを非表示/違反報告)
ちあき(プロフ) - ttakedasaki0906さん» ありがとうございます!!そうですね、キッドさんも続編以降出せたらなとは思ってます!楽しみにしていて下さい!^^* (2022年9月28日 16時) (レス) id: 1ed832ee63 (このIDを非表示/違反報告)
ttakedasaki0906(プロフ) - ローの独占欲が最高すぎてニヤニヤしちゃいます笑!!キッドも好きなのですがキッドは登場予定はありますか!?(≧∀≦) (2022年9月28日 0時) (レス) @page50 id: 668cdece5e (このIDを非表示/違反報告)
ちあき(プロフ) - きゃーぽんさん» わあ、、出会ってくれてありがとうございます!!頑張ります! (2022年9月27日 11時) (レス) @page34 id: 2fefdf0ec1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちあき | 作成日時:2022年9月22日 18時