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船内を軽やかに走り抜け、医務室にイッカクをぶち込み、大人しくしてろと言いつけそのまま甲板へ出た。
外に出た瞬間後ろから飛んできた鞭を側転で躱し、他の船員たちの邪魔にならない場所へと移動した。そこからのAの動きは早く──────
「おいA!…!?」
船内から出てきた彼女を見かけたローが追いかけて来た頃には、リト、ブラド、ゴロタスの三人は気を失った状態で床に伏せており、バロックもAに掴まれた顔面だけを支えとして、船の外にぶら下がっていた。
「…汚い」と呟いたAは依然として無表情を貫いており、その瞳はゴミを見下すかのような軽蔑の色が浮かんでいた。
「…女性を思い切り殴っちゃ駄目だよ」
「ッ、は、自業自得だろうが…!!」
ぎり、と頭を掴む力を強めたAは、バロックの言葉など無視し、淡々と術式の説明をし始めた。
「──術式、『呪力操術』。自身の呪力だけでなく、呪力を流し込んだものを操ることができる。腕や足に集中させることでドーピングっぽいことも。…呪力を持たない人間には血液を与えることで呪力を流し込み、更に操ることもできる」
急に訳のわからない話をされたことによりバロックは困惑したが、続いて彼女が口にした言葉に顔を真っ青に染め上げた。
「──また、術式の詳細を開示することで、その効果は跳ね上がる。先ほど私は貴方に頬を殴られた。その時貴方の手には私の血が付着したはず。
……今、貴方の中の私の呪力を操れば、簡単に暴走する」
──────身体の内側から爆発。なんてことも有り得るかもね。
「…!ッ、!!!ひッ、やめ、命だけはッ」
「……いざというときに命を捨てる覚悟が、人を殺す覚悟がない奴が、人の命を奪っちゃいけないよ」
無情にそう言い捨てたAは、そのままバロックを海へと落とし、呪力を軽く操り、浮き上がりにくくした。
続いて床に伏せる部下三人組を順番に持ち上げ、同じように海に落としていった。
「…ついでに貴方たちに憑いてた“それ”も祓っておいたよ。…感謝しな」
温度のない笑顔を浮かべ、服の汚れをはたき落とした。
「…覚悟がないのは、私だったみたい。ね、七海、灰原…」
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ちあき(プロフ) - shionさん» 初コメありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです!!続編までもう少々お待ちください!! (2022年9月29日 8時) (レス) id: 2fefdf0ec1 (このIDを非表示/違反報告)
shion - 初コメ失礼します!!読んだら本当に止まらず、すっごく面白くて!!もっと早くに出会っていたかったですっ…!続編ずっと待ってます!! (2022年9月29日 1時) (レス) @page50 id: f0db8db4d6 (このIDを非表示/違反報告)
ちあき(プロフ) - ttakedasaki0906さん» ありがとうございます!!そうですね、キッドさんも続編以降出せたらなとは思ってます!楽しみにしていて下さい!^^* (2022年9月28日 16時) (レス) id: 1ed832ee63 (このIDを非表示/違反報告)
ttakedasaki0906(プロフ) - ローの独占欲が最高すぎてニヤニヤしちゃいます笑!!キッドも好きなのですがキッドは登場予定はありますか!?(≧∀≦) (2022年9月28日 0時) (レス) @page50 id: 668cdece5e (このIDを非表示/違反報告)
ちあき(プロフ) - きゃーぽんさん» わあ、、出会ってくれてありがとうございます!!頑張ります! (2022年9月27日 11時) (レス) @page34 id: 2fefdf0ec1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちあき | 作成日時:2022年9月22日 18時