・ ページ34
.
敵の殲滅、並びに金品や医療品の強奪を済ませたハートの海賊団は、ローの指示によって再び海中への潜水を行っていた。
医務室でローの治療を受けたイッカクは、同じく頬に湿布を貼ったAに涙を浮かべながら抱き着いていた。
「わぁああごめんねぇ!!守ってくれてありがとう……!」
「…無事ならそれで構わない、」
「!!…Aすっごい格好良かった…下手したらここの男共より!」
「…それ言って大丈夫…?」
先ほどの戦闘で女子部屋は扉が壊れてしまい、一晩だけだが男部屋で雑魚寝をすることになった二人は、船員たちの心配の声に答えつつ、散乱した部屋の片付けを始めた。
じくじくと痛む頬に、Aは違和感を抱いていた。
──────この感じ、久しぶりだな。
普段は怪我をしたとしても、先輩である硝子の反転術式で綺麗さっぱり治してもらえるため、殴られた後の腫れている感覚は久しぶりだった。
…やっぱり、怪我なんてそうそうするもんじゃないな、と一人心の中で呟いた。
*
時は過ぎ夜。寝る準備を済ませたAは、男部屋の隅でシャチと並んで座っていた。
右側に座るシャチは、彼女の右頬を見ては忌々し気に顔を歪め「あの四人海から引っ張り上げてでも殺せばよかった」と呟いては舌打ちをしている。
指先で湿布の上から頬を撫で、「痛くない?」と優しく問いかけるシャチの変わり身の速さに驚きながらも大丈夫、と返した。
「あー…俺これ、治り早くするまじない知ってるぜ。やる?」
「?うん、気になる──────」
──────ふと、顔に陰がかかって、湿布の上に、何か当たって。“それ”はゆっくりと弧を描いたのが見えた。
「ど?早く治る気するだろ?」
「…ッ!?」
不意打ち成功〜、と喜ぶシャチをじとりと睨んだAは、熱の集まった顔を見られないよう下を向き、「…自分がしたかっただけじゃないの、」と、嫌味を垂れた。
「ん?…うん、俺がしたかっただけ〜」
さらりとそう返され、再度彼女が動揺して肩を揺らしたのを見逃さなかったシャチは、至って冷静に、ただしだらしなく上がった口角を隠すことなくかわいい…と小さく呟いた。
.
1177人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちあき(プロフ) - shionさん» 初コメありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです!!続編までもう少々お待ちください!! (2022年9月29日 8時) (レス) id: 2fefdf0ec1 (このIDを非表示/違反報告)
shion - 初コメ失礼します!!読んだら本当に止まらず、すっごく面白くて!!もっと早くに出会っていたかったですっ…!続編ずっと待ってます!! (2022年9月29日 1時) (レス) @page50 id: f0db8db4d6 (このIDを非表示/違反報告)
ちあき(プロフ) - ttakedasaki0906さん» ありがとうございます!!そうですね、キッドさんも続編以降出せたらなとは思ってます!楽しみにしていて下さい!^^* (2022年9月28日 16時) (レス) id: 1ed832ee63 (このIDを非表示/違反報告)
ttakedasaki0906(プロフ) - ローの独占欲が最高すぎてニヤニヤしちゃいます笑!!キッドも好きなのですがキッドは登場予定はありますか!?(≧∀≦) (2022年9月28日 0時) (レス) @page50 id: 668cdece5e (このIDを非表示/違反報告)
ちあき(プロフ) - きゃーぽんさん» わあ、、出会ってくれてありがとうございます!!頑張ります! (2022年9月27日 11時) (レス) @page34 id: 2fefdf0ec1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ちあき | 作成日時:2022年9月22日 18時