ラップなんか出来ないので、拳で生き残ろうと思います 2【ヒプマイ】 (ページ40)

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せめてシブヤだけは平穏であれページ40

えぇ、皆さま。始まって早々愚痴で申し訳ないのですが。

目覚めたらもう翌日の朝だったわけでして

私が寝ていたのは自室のベッドの上なわけでして

つまり左馬刻の野郎は私をそのままにして帰ったということだ。

『あの野郎…普通あのまま帰るかよ…もう。』

残っていた料理は全部食べていってくれたようで

丁寧に後片付けまでしていただいたのはありがたいのだが

そのまま帰ることないだろ馬鹿。

『…何か言ってから帰れよ…寂しいじゃんか。

……寂しい？は、何言ってんの私。

寂しくないし！あんな奴、帰ってくれて清々したわ。

つか何で家知ってんだよ気持ち悪い！

……誰に言ってんだろ。虚しい。』

自身の中に浮かんだよくわからない感情を払拭するように

昨日入り損ねたお風呂に入って

軽い朝食を取ってから、今日の予定を考えることにした。

『…何か、昔の話したらげんたろーに会いたくなってきたな。

この前の件も謝ってないし…うん、会いに行こう。』

また居留守を決めこまれたら、扉を破壊してでも会ってやる。

舐めんなよ、お前が家の中にいることぐらい気配で分かってんだよ。

そうとなればやることは決まった。

乾かし終わった髪を整え、必要最低限の荷物を持って

げんたろーの家に行くために家を出た。

のが、数十分前の話。

「うぅ…死ぬ………誰か…ッ…！」

家の近くの公園で、紺色の長い髪の背の高い男性が

死にそうになりながら倒れているのを見つけたのが現在である。

ヨコハマじゃないぞここ。シブヤだぞここ。

何があった。通り魔にでも刺されたのか警察を呼べ。

…声、かけてみます？

『あのー…大丈夫、ですか？』

「んぇ…？誰だ、お前……つか、死ぬ…！」

『ちょ、まだ死なないでくださいよ！？

救急車…いや、警察…？』

「は…」

『は…？』

「腹、減った…」

男性がそういうのと同じくして、公園中に男性の腹の虫が鳴った音が響いた。

え…あの、つまり…事件とかではなく、治安が悪いわけでもなく

空腹だっただけ…ってこと…？

『は、はぁ…？』

「何か食うもん…ください…」

『え…っと……何もないなぁ…

そこのコンビニで買ってくるので、ちょっと待っててもらって良いですか。

できればそこのベンチにでも座って…』

「マジで！？俺金持ってねぇよ！？」

もしかして、この人も家出でもしたのかな。

だったら、何かほっとけないな。

げんたろーが助けてくれたみたいに、私もこの人を助けよう。

『いいですよ。ちょっと行って来ますね！』