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夢と幻の狭間で ページ33

三郎くんにはもう会わない。

そう決めてから数日。

あれから家には帰っていない。

幸いにも、財布も携帯も…生きていく上で必要なものも持っていたし

元々バイトもしてたから、別に困窮しているわけじゃないけど。

酷く、虚しかった。


そんな、雨の日。


「…申し訳ありませんが、小生には行く所がありますので。」


「行かせるわけねぇだろ…なぁ、夢野先生?」


家族だったものから逃げるようにやってきたシブヤで

「雪解けの雫のごときご尊顔」とでも、三郎くんなら形容しそうな

書生のような恰好をした男性が、わかりやすいチンピラに絡まれていた。


夢野「…貴方のことなど知りません。人違いでは。」


「間違うわけねぇだろ。こちとらなぁ、お前に女取られてんだよ。」


夢野「小生には恋人などおりません。」


あれだけ顔の整った人だ。

有名人とかならば、彼女さんに「あなたじゃあの人以上にはなれない」とか

そんなことを言われてフラれた、所謂逆恨みだろうな。

面倒だ、助ける気も起きない。

それに、私に助ける力なんかない。


「っざけんなよ!その綺麗な顔、ぐちゃぐちゃにされてぇのか!」


夢野「覚えのないことなのだから仕方ないじゃないですか。」


ただでさえ、雨に濡れて体が重い。気分が重い。

お前なんか、救い上げてたら

私が先に沈んじまうだろうが。


「あぁそうかよ。じゃあ、そのまま死んどけ!!」


夢野「ナイフ…ッ…!?」


いやいや、そこは殴るとかで良いじゃん。

なんでナイフ出すの。殺さなくてよくないかな。

馬鹿だろ、ホント馬鹿。

…まぁ、だけど


『…ナイフは、人刺す道具じゃないよ。多分。』


夢野「えッ…」


沈む覚悟で、間に入って素手でナイフ受け止めた私よりは

きっとマシだから、安心して捕まってください。


「お前…素手で、何やってんだ!」


『それはこっちのセリフ。

そんな逆恨みで殺人犯してたら、人生損するよ。おにーさん。』


ナイフを掴む手に力が入りすぎて、斬れた部分からの出血が止まらない。

雨で濡れて滲みるし、最悪だ。

これで負けたらどうしよう。私本当に無力だな。


「…〜ッ!邪魔すんな、クソガキ!!」


『お前に私に命令する権利はない。けど…そうだな。

邪魔してほしくないなら、今から私と喧嘩しよっか。』


「は、はぁ?」


『単純だよ。今からナイフも何もなしで殴り合うの。蹴ってもいいよ。

それで、負けたほうは勝った方に従う。

さぁ、単なる暴力を始めよっか。』


ここで死のうが、私は構わないのだから。

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にゃーちゃん - 初コメ失礼します!とても面白いです!更新楽しみにしてます! (2021年7月10日 12時) (レス) id: 6c3b400c86 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:天空の巫女 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/TENMIKO/  
作成日時:2021年3月20日 21時

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