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強い心の作り方 ページ32

『一郎さん、二郎さん!お願いします、開けてください!!』


なんとか三郎くんを山田家に抱えて連れてくるころには

日は沈み、辺り一帯は暗闇に染まっていた。

両手がふさがっているから、インターフォンすら押せなかったが

声は届いたらしく、すぐに玄関の扉が開かれた。


二郎「A、どうし…三郎!?」


一郎「おい、何があった!?

とにかく入れ!二郎、治療するもん持ってきてくれるか?」


二郎「わかった!A、三郎こっちに貸して。」


『でも、私の…せいで…』


二郎先輩の顔を見て、安堵が広がり

強張っていた体の力が抜け、その場に座り込んだ。


二郎「A!?」


『ごめんなさ…ッ…ごめんなさい!さぶろ…く…私の、せいで…!』


溢れだす涙を止める術がわからない。

なんでこんなに弱いんだろう。

なんでこんなに無力なんだろう。

強くなりたい。強くならないと。

そうじゃないと、また三郎くんがこんな目に。


二郎「…落ち着け。大丈夫だ。

お前のせいじゃないだろ。お前が三郎を傷つけるわけがない。」


『…はい。』


二郎「よし、じゃあ三郎預かるな。」


二郎先輩に三郎くんを預けたはいいものの

やっぱり心配だった。

無理を言っているのは承知で、三郎くんが目を覚ますまで

近くにいさせてもらうことにした。


三郎「……」


一郎「傷は浅くないが…致命傷とまではいかないな。

A、何があったんだ?」


『………三郎くんをここまでにしたのは、私の父親です。』


二郎「え…」


『…私が悪いんです。私が、早くあいつを壊さなかったから。

私が弱かったから、私が無力だったから。

私のせいです。私が、私が、三郎くんに干渉したから…!』


一郎「A、お前のせいじゃない。

自分を責めるな。いいか、自己嫌悪するな。」


どうしたらいい。

迷いを消せばいいのか、心を殺せばいいのか。

それとも、普通に死のうか。

どうすれば、三郎くんに償える。

この命一つで、中学生の記憶に刻んだトラウマの贖罪ができるなら

安いものだ。


『…ごめん、三郎くん。

……もう、君を傷つけさせはしない。

……もう、君に関わったりしないから。

だから、私のこと恨んだままでいいから。もう一回笑って。

幸せに、過ごしてね。』


きっと、これが最善策。

最後にちゃんと三郎くんの顔を見て

踵を返して、部屋の扉に手をかけ

逃げるように、山田家から飛び出した。


三郎「………馬鹿、だ。

馬、鹿にも…ほどが、ある…!」


最後になるであろう、三郎くんの罵声を浴びながら。

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にゃーちゃん - 初コメ失礼します!とても面白いです!更新楽しみにしてます! (2021年7月10日 12時) (レス) id: 6c3b400c86 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:天空の巫女 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/TENMIKO/  
作成日時:2021年3月20日 21時

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