見たくもない作り話 ページ23
幻太郎side
嫌な眼だった。それでいて、懐かしい眼だった。
小生とAが初めて会った日に見せた、全てを殺そうとせんばかりの眼。
どうして戻ってしまった。
あんなに優しい子になったのに。
いや、元から秘めていた優しさでそんな感情を殺していたはずの彼女が
どうして、あぁなった。
夢野「…A。どうして。」
「…おい、そこでなにしてやがる。」
傷心中の小生にかかった声は、優しい彼女の声ではない。
重く低い、裏社会で生きる者の声。
彼女の心に住み着いた、狼の声。
夢野「…そちらこそ、碧棺左馬刻さん。」
左馬刻「ここは俺様の街だ。理由がなきゃいるなってか?」
夢野「いえいえ、そういうわけでは。
小生はただの仕事ですよ。もう帰りますが。」
左馬刻「ほー…今日はAのストーカーじゃねぇんだな。」
夢野「……ッ…誰がストーカーですか。
麻呂はただの…あの子、の…」
友達、なのか。
あんなに冷たい眼を向けられて猶、その言葉を使う権利が小生にあるのか。
言葉が浮かばないまま黙り込んでいると
痺れを切らしたのか、目の前のヤクザが大きな声を上げた。
左馬刻「だだの何なんだよ!クソッ…どいつもこいつも暗い顔しやがって。」
夢野「…すみません。では、小生はこれで。」
ヤクザに背中を向け、歩き出したと同時に
足がもつれて近くにあった電柱に激突した。
夢野「いッ?!」
左馬刻「お、おい…」
夢野「し、心配には及びませんことよ。」
ふらつく足をどうにか整え
もう一度歩き出すと、持っていた荷物が全て地面に落ちて
中身がばらまかれた。
あれ〜?小生はいったいどうしたんでしょうね〜?
左馬刻「ッ…あ"ーもう。わーったよ。
話くらいなら聞いてやるから、一回落ち着け馬鹿作家。」
夢野「…先ほどの事なんですが。」
碧棺左馬刻に、さっきまでのAとのことを話した。
なるべく彼女の過去に触れないように
彼女の態度の事を事細かく説明した。
話してる間に泣きそうになったんですけど。
夢野「……と、いうことです。
どうして小生の事を知らないなんて言ったのか…わからなくて。」
左馬刻「…どういうことだよ。
アイツがお前のこと忘れただぁ?…頭でも打ったんじゃねぇのか。」
夢野「…そうなら、いいのですが。」
乱数の言っていた件と、もし関係があったとしたら
だとしたら、最悪の事態に発展する。
自分の想像力が恨めしい。何もできない無力な自分が憎い。
このヤクザなら、どうにかできるかもと
思ってしまう自分が嫌になる。
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にゃーちゃん - 初コメ失礼します!とても面白いです!更新楽しみにしてます! (2021年7月10日 12時) (レス) id: 6c3b400c86 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:天空の巫女 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/TENMIKO/
作成日時:2021年3月20日 21時