ラップなんか出来ないので、拳で生き残ろうと思います 2【ヒプマイ】 (ページ15)

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喜んで不審者になりましょうページ15

ホームから出て辺りを見渡すと

ご飯を食べに行った時と同じように、赤い髪の男性が

こちらに走ってきているのが見えた。

あの日と違うのは、今日の彼は私服だという点か。

『久しぶりですね。独歩さん。』

独歩「あぁ、久しぶりだな。Aちゃん。

急にごめんな…今日くらいしか休みとれなくて…」

『もう少し余裕のある日に呼んでください。

夏休み中なら暇ですので。』

独歩「…うん、ありがとう。Aちゃん。」

やっと流れるように「ありがとう」と返ってくるようになった。

卑屈さが治ったわけじゃないから、独歩さんの家に向かうまでの雑談は

それはそれは悲壮感に包まれたものだったけど

やっぱり、この人には笑顔が似合う。

独歩「着いたよ……って、どうしたの。」

『え、いや…独歩さんは笑顔が可愛いなぁって。』

独歩「へッ！？いやいやいや！俺なんか可愛いわけないだろ！

俺よりAちゃんの方が何倍も…いや、数億倍可愛いからな！？

俺なんか、今日有給とる時だって何時間もあのハゲ課長に頭下げて

それでも渋々しか認められなくて…クッソ、俺が無能だからか。

だからあのハゲにあんなに時間を…」

『何かすみませんでした。』

うん。もう二度と可愛いとか言わない。

心の内に秘めて世界の中心で叫んでくる。

なんとか卑屈モードに入った独歩さんを宥め

目の前の家の扉を開けてもらうことになった。

独歩「一二三、ただいま…」

『お、お邪魔します…』

一二三さんを怖がらせないように、なるべく声を抑えてそう言うと

奥の方の壁から、独歩さんと出会った時に見た金髪の男性が顔を出した。

うむ、相変わらず怯えられている。

一二三「い、いい…いらっしゃい…おかえり、独歩。」

全く視線が合わない。

確か私の事見ただけでも怯えてたっけ。

何のために帽子とマフラーを持ってきたんだ。

温度など気にせず、顔が隠れるようにマフラーを巻き

持ってきた帽子を深くかぶった。

やっべ、何も見えねぇ。

独歩「…何、してるんだ。」

『ドン引きしないでください。

一二三さん、私の事見るのも怖いと思って。

だから、せめて顔隠せばちょっとは楽かなと。

そしたら私が何も見えなくなりましたけどね。』

独歩「…ぶっ…あっはは！

いき、なりはやめてくれ…！どう見ても不審者だぞ…ははっ！！」

一二三「へ…」

独歩「ふははっ…と、とりあえず上がって。」

『笑いすぎだろ…お邪魔しま…い"っだ！？』

普通に玄関の段差に足ぶつけたんですけど。

おいこら独歩さん何時まで笑ってんだ。