サッカーなど私に出来ると思うかね【アレスの天秤】

日曜日も終わりのお時間 ページ36

あの後、全く目を合わせてくれなくなりました

今は、私の少し前を歩くヒロトの後ろについてどこかへ向かっています


『ヒロト、もう暗くなってきたけど…』


吉良｢……｣


『…無視するなら帰るよ私』


吉良｢…お前は黙って俺の手握ってろ｣


言われた通り手を握ると、少し驚いてまた歩き出した

会話もないまま、歩き続けていると
とある場所の前でヒロトが止まった


吉良｢俺が来たかったのはここ｣


そこには、ライトアップされた噴水が
月明かりに照らされて、輝いていた


『うわぁ……！』


吉良｢…お前、雷門のサッカー部だったんだな｣


『うげっ…そりゃプレカあったらそうなるよね…』


吉良｢別に驚かねぇけどさ、お前下手くそだけどセンスはあるし

でも、隠されてたのはムカつく｣


『隠してたんじゃなくてお前が勝手に勘違いしただけだけどね…』


相変わらず目は合わせてくれない
でも、心なしか笑ってる気がする


吉良｢お前と会って、つまんなかった人生がちょっとは面白いと思えるようになった
ちゃんと友達だと思ってた

だから、隠し事なんかして欲しくなかったんだよ｣


『…お前の人生を面白くするのは仲間だよ』


吉良｢前も言ってたよな、そんな事
ホントに変な奴｣


でも……と、言葉を続けながら私に近づき
ゆっくりと、私を抱きしめた


『ほぇ！？』


吉良｢また変な声出しやがって…
でも、俺はお前のそういう所が気に入ってんだから｣


抱きしめられたかと思うと、直ぐに私から離れた

首元に、ギターを象ったチャームの付いたネックレスがあると気づいたのは、そのすぐあとだ


吉良｢お前はそのままでいろよ、A｣


『…これいつの間に買ったの？』


吉良｢前日、お前が楽器好きなのは知らなかったけどよ
俺のセンスで選んだだけ｣


『へぇ…意外と意思疎通してるのかもね、私たち』


吉良｢誰がテメエなんかと…願い下げだ｣


笑ってるから、冗談だっていうのがわかる

…こうやって、冗談を言ってくれた大好きな友達にはもう会えない
こういうトリップものって大体元の世界には帰れない


『ねぇ、ヒロト』


吉良｢何だよ｣


『私さ、ずっと迷子なんだ
誰かが手を握ってくれていても、道を教えてくれても帰れない…』


誰も、私を元の世界には帰せない
自分の目に涙が溜まるのがわかる


吉良｢何言ってんだよ、俺は神だぞ？
お前くらいちゃんと送り届けてやる

だから、俺の手をちゃんと握ってろ｣


『…！うん、ありがとう…ヒロト』

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