検索窓
今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:11,829 hit

Storage*32 ページ33

痛い。
苦しい。

普段彼が私に触れるときの優しい手付きは嘘のように、きつくきつく抱き締められる。

だけど、何故だろうか――苦しいはずなのに。
こうして抱き締められていることを、嬉しいと感じてしまう私もいるようだ。

自己矛盾。
ありがちなそれは、ただでさえぐちゃぐちゃになっていた私自身の心情を、更に掻き乱していく。

この感情の、正体が分からない。
彼の反応の1つ1つに一喜一憂してしまうことや、彼のことばかりを考えてしまうことも――きっと、関係があるのだと思う。


「……」


数多ある伝えたい言の葉は、唯1つとして口に出来ないままである。

これは1度失った大切なものを傷つけてしまった私への報いか、はたまた……いわゆる"戸惑い"というものか。


(……なんでこの人はいつもいつも私に良くしてくれるのだろう)


ああ、私はなんてひねくれた、意地の悪い人間なのだろうか。
ふと浮かんだ1つの疑問から、汚ならしい現実(リアル)な発想が溢れ出して止まらない。


ベッドの真横で、自分より頭1つ分程背の高い彼にぎゅっと抱き締められている現状は変わらないままだ。

彼の顔は私の肩口に埋められているため、ひどく温かい吐息がダイレクトに首筋へとかかっていて――なんだろう、とても


(……こそばゆい、ような)


不思議な感覚だ。
記憶を失う前の私なら、この気持ちの正体も分かったのだろうか。

なんて

今更そんなことを案じたところで、私が失ったそれらを取り返すことができるわけではない。

……もし


(もしも、私が記憶をなくすことなく、平穏無事に今を迎えていたら)


どうなってたのかな。やっぱり、亮さんと一緒にいれたのかな。
それとも、どっちにしろ亮さんとは終わりを迎えることになったのかな。


……頭が痛い。
いつだったか、この痛みを感じた時があったはずだ――――そう、確か。

記憶の1部を思い出すことが出来た、あの時。

……あれ、でもあの時って頭痛の後に倒れちゃったんじゃ。


(……うわぁ、ツイてない)


そのまま意識を手離した。

Storage*33→←Storage*31



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (27 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
35人がお気に入り
設定タグ:そ.ら.る , 恋愛 , 歌い手   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

宇宙音(プロフ) - 裏音さん» わわわありがとうございます!!楽しんでいただけるようなものを目指して準備してますです!(?) (2015年3月14日 23時) (レス) id: c19bdcd8dd (このIDを非表示/違反報告)
裏音 - 完結おめでとうございます!前作から全て読みました!すごく面白いと思います!続編、楽しみにしていますね( ´∀`*)ゞ (2015年3月14日 17時) (レス) id: b03c2882f6 (このIDを非表示/違反報告)
宇宙音(プロフ) - まひめさん» 感動するだなんてお言葉、恐縮です……!!応援ありがとうございます!! (2015年1月24日 0時) (レス) id: c19bdcd8dd (このIDを非表示/違反報告)
まひめ - すごくいい小説ですね…!!感動します。更新頑張ってください! (2015年1月20日 20時) (レス) id: 20c20fcea2 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:宇宙音@千歳 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/sorane9132/  
作成日時:2014年7月25日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。