第四話 ページ6
.
ピピーーーーーーッ
「…………すごい……」
フルセットの長い長い試合
セットカウント 3(烏野)ー2(白鳥沢)
勝者:烏野高校
でもそんな時間の長さを感じさせないくらい熱中させれた試合
試合終了
固唾を飲んで見ていた私が漏らしたのは、
ありきたりなそんな言葉だけだった。
「う、お、…」
試合終了のホイッスルが鳴って数秒、
静まりかえっていた会場が一気に大きく大きくどよめいた。
「うそー!」
「まじかよー!!」
周囲の生徒が落胆の声を漏らす。
私は、「すごい」の一言しか発せなかった。
とてつもない勢いでぐるぐる自分の中を駆け巡る衝動があった。
すごい………すごい…!!
白鳥沢はもちろん、すごく強かった。
ましてや、としくんなんかエンジン全開だったはずだ。いつになくノリノリだっただろう。
天童くんのゲスブロックだって言わずもがな。キレッキレだった。
ウチのセッターの子もよく逃げずにとしくんにトスを上げ続けたと思う。
瀬見くんのピンチサーバーの時のサーブだってエグかった。
一年のスタメンの子もちょっと調子悪くなっちゃった時もあったけど、最後は持ち直してた。
山形くんだってスーパーレシーブ目立ってたし。
大平くんとか他の2年の子だって、活躍してた。
ウチに何か欠点があったわけじゃない。
皆、全力だった。
でも、それ以上に相手チームがすごかったんだ。
何より、烏野のリベロと11番くん。
執拗にワンタッチしてどんどんプレッシャーかけてたし、完成されたものじゃないけど試合中にトータルディフェンスを磨き上げてウチを追い詰めた。
1番くんのレシーブの安定さはすごくて、穴を埋めるまさに大黒柱だった。
2番くんだって、見た感じセッターな気がするけど自ら攻撃に加わるのは相当練習したんだろう。
エースの3番くんの威力も相当だった。5番くん共々、ここぞと決める時のメンタルがすごい。
12番くんのジャンフロだって、いいコースだったしよくウチのレシーブを乱してた。
でも、としくんに挑戦したコンクリート出身であろう9番くんとあのオレンジ頭の小さな10番くんは怪物だ。
10番くんのバネとスタミナも化け物だけど
9番くんの10番くんにドンピシャに合わせるあのトス
「まさに天才……」
私はあの9番くんから目をそらせなかった。
120人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:にゃん吉 | 作成日時:2020年1月21日 23時