その胸の中は私だけに―――― 【練紅覇】*first*

∵†第一話†∴ ページ3

「…………ん………」



直接伝わってくる陽光に、目を覚ます。




「………………森の中で寝たのにな」




太陽の光は好きじゃない、だから当たるのを拒否して、葉と葉が重なりあって、当たらないような場所を選んだのだが。ばっちり当たってしまっている。




しかし、それもそのはず。




「……ったぁ……」





陰を作ってくれていた一本の枝が、一人の少年によって、折れているのだから。




「……………あの」





普段なら声をかけずに、そのまま立ち去るだろう。しかし、今の私はすこぶる機嫌が悪かった。こう見えても。




「ん〜？君、だぁれ？」




その少年は、左側にずれてしまっている被り物を、両手で直しながら私に訪ねて来た。





「…………あなた誰、って、それはこちらの台詞です。あなたは一体誰なんですか、私の安眠を妨害して」




本当、いい迷惑だ。


いや、どちらかというと、起こされた事より、日を当てられた事に怒っているが。



「僕ぅ？僕はぁ、煌帝国第三皇子、練紅覇。お忍び旅行中のね〜」




お忍び旅行って、それ良いの？怒られるんじゃ………。



……………って、私ってば何考えてんのよ、どうでもいいじゃない、こんなやつ。



「それで、君はぁ？」



「…………簾桜A」




相手の名前を聞いたら、自分の名前を教えるのが礼儀だと聞いたことがあるけど………、こんなところで役立つなんてね。

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