【刀剣乱舞】霊力循環異常症候群Ⅱ型専門医助手 (ページ12)

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一期一振に連れられ、私は縁側へとやってきた。

　庭では、短刀たちが楽しそうな声をあげて遊んでいた。

　庭の中央には、満開の桜。

　外は初夏。桜なんてとっくに散っているが、それは本丸や刀剣男士や審神者らのような時間を扱う者には無関係だ。

　景趣によって、いつでもどんな季節でも本丸内に映すことができる。

　まあ、景趣の美しさは審神者の霊力の透明度と比例するようだから、どこの本丸もこんなふうに……とはいかないのが現実なのだが。

　「どうです？屍体でも埋まっていそうな桜でしょう？」

一期一振は、庭の桜をそう評した。

　「それはどういう意味ですか？」

「あれ、ご存知ありませんか？梶井基次郎ですよ。“桜の樹の下には”」

そういえば、なんとなく薄ぼんやりと、そんな話を知っていた気がする。記憶喪失前のことだとすれば、大きな前進だが……

　「本を持ってきておられたようなので、てっきりお好きなのかと」

彼は首を傾げた。

　「あれは、通吉に記憶を取り戻すヒントになると勧められたので……。

　読書は好きですが、それほど詳しくはありません」

「そうですか。それは残念です。私は本を読むのが好きなのですが、あまり趣味の合う仲間に巡り会えず、寂しかったのですが……」

そう言って、一期一振は本当に寂しそうに笑った。