運命なんかじゃ、ないんです。【歌い手小説】

032..わかんないよ ページ33

「わかんないです・・もう。」


なんで泣いてるの?

罪悪感?悲しみ?先輩につられて?


わからない。自分が何で泣いているのか。


自分の行動が、自分で理解できなかったことは、
今まで生きていた内で何回あっただろうか?


人間は誰でも、自分の思考の下行動し表情を作り、他の人との関係を作り上げる。


―――でも、私は・・


私、は―――・・


・


「もう、泣かないでよ。」


「――ぁ・・ごめんなさい・・」


一人で耽っていて、隣の天月さんを忘れるほどに涙を流すしかしていなかった。


お互い言葉も発さず、私の鼻を啜る音だけが、事務所の裏口の前で風に紛れて消えた。


ぶつかった廊下の真中で、『此処だと誰か来るかもだし、場所移そう。』と誘われたのだ。


都会の事務所の裏口で、フェンスに囲まれた日陰の暗く冷たい空間であった。


・


もし、本当だったら、


『しゃむくんは、高校で好きな人ができたんだ―――・・』


もし、本当に、ずっとずっと、


私がこうして、天月さんに弱みを公開している間も

まふさんに心惹かれた瞬間も

まふさんと楽しく話していた時も、


―――先輩が、私を想ってくれていたとしたら―――・・?


「自信なんて、ないですよ・・・」


目全体を両手で覆いながら、止まらない涙を必死に抑えていた。


だって私分からないもん。

先輩が好きとか、

まふさんが好きとか、


好きの定理ってなんですか?なにが異性として好きって言える境界線なんですか?


一緒にいて楽しいのがそれならば

まふさんの方が、有利だよ。

胸が跳ねるのがそれならば、

先輩の方が有利だよ。


そしてもし、自分の全て、つまり汚点・弱みを知っているのがそれならば、


天月さんの方が有利でしょ――――・・?


・

・

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