【移動チョコ販売大作戦】 ページ21
作戦は、上手くいっていた。
ウィリー・ウォンカの移動チョコ販売は、この街の至る所へ大輪の笑顔を咲かせる。
ある若者は自信が沸き起こりプロポーズを成功させ、淑女たちはご機嫌に歌を口遊み、紳士たちはかつて栄光あった頭皮を取り戻し……。
摩訶不思議なチョコレートは、すぐに街の人々を虜にさせていた。
勿論、警察署からは目の敵にされていて、騒ぎを目撃される度に警笛が鳴り響いていた。
だが元配管工のパイパーの手引きで下水道を自由自在に駆け回り、逃走も進出もお手の物であった。
チョコ一つ銀貨一枚。グルメガレリアで売られているチョコの値段より遥かに安いのも、人々にとって魅力の一つであった。数日で売上は上々だ。
さらにウィリー・ウォンカ製スイーツにはもう既に、熱狂的なファンが付いていたのである。
「やぁ、ウォンカくん。調子はどうかな?」
「どうもポールさん。えぇ、上々です。お陰様で」
人気の少ない裏路地。
ポールと呼ばれた初老の男との取引は、毎回秘密裏に行われていた。
常連の彼はマカロンやキャラメルなどをウォンカから受け取ると、銀貨が入った袋を手渡す。
甘い香りがふわりと漂い、男は嬉しそうに笑みを浮かべた。
「毎度ありがとうウォンカくん。これが毎日の楽しみの一つでね」
「こちらこそ、いつもご贔屓にどうもありがとうございます」
「悪いねぇ、こんなコソコソ来てもらって。妻に見られたら叱られてしまうんだ」
苦笑する常連さんに「訳ありで大変そうだな」と、ウォンカの心の中で過ぎった。
それから一言二言交わして、いつも通り別れようとした時、男が何かを差し出してくる。
白くて小さい紙、何かの文字が書かれていたがウォンカにはそれが何か分からなかった。
「私のレストランだ。いつも世話になってるお礼に、今度是非ともご馳走させてくれ。
予約の電話、待っているよ」
そう言って、最後にもう一度丁寧にお辞儀をしてから常連の男は明るい表通りへと去っていった。
嬉しそうな男に、ウォンカの気持ちも沸き上がる。
それから宿へ戻る為にヌードルの引く台車に乗り込むと、まだ文字の読めない彼は貰ったカードを彼女に手渡した。
「……え!?これ、どうしたの!?」
「常連のお客様のお店だって。何か驚くことでも書いてあった?」
大きな袋の中からウォンカが顔を出す。
眼を真ん丸にしたヌードルが紙を彼の目の前に突き出して来た。
「これHonest kitchenって書いてあるの!」
.
46人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ソフナー(プロフ) - かんなさん» かんなさん、いつもコメントありがとうございます!いえいえいえ、こんな素人文章にお金使わないでください……!寧ろ好きと言ってくださるかんなさんにお金払います(?)いつも応援ありがとうございます🥰 (2月5日 6時) (レス) id: deb951e27a (このIDを非表示/違反報告)
かんな - 何かもう本当に読み進める度にこの作品が好きになります🥲💖もうお金払ってでも読みたいレベルです‼️ (2月4日 22時) (レス) @page39 id: 64afab6d44 (このIDを非表示/違反報告)
ソフナー(プロフ) - かんなさん» かんなさん、いつもありがとうございます!皆さんが読んでくださる事が私の励みにもなります!🙏これからも日々の楽しみの一部になれるように、頑張って更新続けていきますのでよろしくお願いします💖 (1月28日 8時) (レス) id: deb951e27a (このIDを非表示/違反報告)
かんな - やっぱりすごく読んでいて続きが楽しみになる作品ですね🥲私の毎日の楽しみになってます!! (1月28日 8時) (レス) id: 64afab6d44 (このIDを非表示/違反報告)
ソフナー(プロフ) - kinokokanaさん» kinokokanaさんコメントありがとうございます!楽しんで下さる方がいらっしゃるのが一番励みになります😭極力、一日か二日に一度更新を目指しているので、頑張ります!💪これからもよろしくお願いします💖 (1月17日 12時) (レス) @page15 id: deb951e27a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ソフナー | 作成日時:2024年1月7日 21時