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欲 * ページ43

甲板で、夜風に吹かれながら月見酒をしていると、後ろからオヤジの声が聞こえてきた。
オ「一人か?」
「うん。まぁね」
オ「隣いいか?」
「断るわけないじゃん」
そう首だけで振り返ると、オヤジの笑顔が目に入った。
オヤジは隣に座ると、持ってきたと思われる酒を飲んだ。
オ「娘と飲む酒は格別だ!」
「私も、一人で飲むより誰かと飲んだ方が美味しいよ。でも、オヤジと飲むと一番美味しい」
そう言うと、オヤジは私の頭を優しく撫でてきた。
オ「嬉しいじゃねえか」
「そう?なら良かった」
オ「なぁA、お前は何か欲しいものはねえのか?」
突然の問いかけを不思議に思ってオヤジの顔を見ると、その目はとても優しかった。
「何で?」
オ「お前は無欲だ。自分からは何も言わないし、求めない」
「そうかな?」
オ「あぁ」
確かに、あまりオヤジに我が儘を言った事はない。お兄ちゃんやマルコみたいな隊長たちには、ちょっとした頼み事をしたりする事はあるが、オヤジにはした事がない。
「そんな事ないと思うんだけどね。私って意外と欲張りだよ?」
オ「ほぅ、例えば言ってみろ」
オヤジの言葉に、酒瓶に入っていたお酒を一気に飲み干してから答えた。
「最近はね、新しい服が欲しい。もっと強くなりたいし、お兄ちゃんともっといたい。たまには冒険がしたいし、オヤジとずっとこうやってお酒飲みながら話していたい。あと…」
オ「グララララ、そりゃあ確かに欲張りだな」
「でしょ?」
新しい酒瓶を開けて、それを口に含む。
オ「お前はよく飲むなぁ。ハルタが飲めねえのはお前のせいかもな」
「えー?そんな事ないでしょー?普通お兄ちゃんが飲めて私が飲めない…とかじゃないの?」
オ「そんな事俺が知るかぁ!」
盛大に笑うオヤジにつられて私も笑った。
オ「A。さっき言ってた望み、俺が叶えてやるさ」
「本当?」
オ「あぁ。任せとけ。俺ぁ白ひげだ!娘の頼みならどんな事だってしてみせるさ!」
「オヤジ…!」
私は酒瓶を床に置いてオヤジにもう一つだけ我が儘を言ってみた。
「もう一つだけいい?」
オ「あぁ、言ってみな」
「ずっと元気でいてね」
笑顔で言うと、オヤジは驚いたような表情をした。そして、私の頭を優しく撫でて言った。
オ「可愛い娘に言われちゃ、無理はできねえな」
「お酒も控えた方がいいかもね。オヤジのお酒は私とイゾウが美味しくいただくから!」
オ「抜け目ねえな!」
二人分の笑い声が誰もいない甲板に響いた。

不死鳥と *→←IF



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シュケル - アンさん» どんな薬にもられたか気になりますな!!!そのリクは!!! (2017年11月25日 4時) (レス) id: 355b3beae0 (このIDを非表示/違反報告)
アン - またリクいいですか?夢主が敵船で薬をもられてしまった話なんてどうでしょうか? (2017年11月24日 18時) (レス) id: b92627aaf7 (このIDを非表示/違反報告)
アン - また最初から見てしまいました!やっぱり素敵なお話ですね! (2017年11月24日 18時) (レス) id: b92627aaf7 (このIDを非表示/違反報告)
シュケル - 隊長達は注射は苦手ですかね?? (2017年11月24日 16時) (レス) id: 355b3beae0 (このIDを非表示/違反報告)
シュケル - インフルエンザの季節ですから注射リクを提案を思い至りました!!! (2017年11月24日 7時) (レス) id: 355b3beae0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:焔彩 | 作成日時:2016年12月25日 9時

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