友騙し編２９ ページ25
浜野先輩の励ましを受けた後、俺は釣り堀からまっすぐ帰宅して薬を飲み、そのまま横になった。
それから数時間眠っていると、心なしか熱も引いて体の怠さが取れた気がする。
すると携帯が音を立てる。母さんからだった。
「母さん？ どうしたんだ」
『あ、京介？ 急にごめんね。母さんと父さん、出張で急遽横浜の方まで行かなきゃいけなくなって。
帰りが明日の夜になりそうなのよ……』
「明日！？」
本当に急な話だ。つまり今晩は両親が不在。俺一人で一夜を過ごさなければいけないということ。
「適当に何か食べてるよ」
『本当にごめんね。戸締りよろしくね。あと火元にも気をつけるのよ』
電話が切れる。俺は静まり返ったリビングで小さく溜息をついた。
するとその時。ピンポーンというドアチャイムの音が鳴り響いた。
こういう時の来客は困る。大抵は両親に用事がある人ばかりで、俺では対応できないからだ。それに、こんな夜分に一体誰が……？
「剣城。こんばんは！」
俺は心臓が飛び跳ねた。ドア越しに聞こえたのが、天馬の声だったから。
……落ち着け。何も怖がることなんてない。大丈夫。
「天馬、か。待ってろ、今開け＿＿＿」
「剣城、今日夕飯ないんだよね？ だから俺、お惣菜とかを作って持ってきたんだ！」
その言葉に、鍵を開けようとした手が止まる。……冷たい汗が頬を伝った。
なぜ天馬は＿＿＿今夜俺の家に夕飯がないことを知っているんだ！？ 俺だって今電話で知ったばかりなのに！
思考が混乱している間も、天馬はドンドンと扉を叩き続けた。
「俺、買い物の途中剣城のお母さんに会って……その時聞いたんだ。インスタント食で済ませちゃいそうだって心配してたから、俺……剣城のお腹の足しになればって思って」
……本当なのか？ 天馬の話していることは……信じていい内容なのか？
「台所を貸してくれれば、味噌汁も温められるよ！ あとサラダに唐揚げ、漬け物もあるんだ！」
「ありがたいが……あまり食欲が無いんだ。食い切れるかどうか……」
「でもでも！ 野菜と豆腐が入ってて栄養満点だよ。体調が良くない時は、インスタントより野菜を食べた方がいいと思う！」
空腹の俺にとって、天馬の話は魅力的なものだ。具沢山でおかずも豊富で、さぞ美味しいんだろう。
だが俺は＿＿＿＿＿鍵を開ける、という単純な動作を未だできずにいた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ココナッツ(；ﾟ∀ﾟ)(プロフ) - 雪華さん» トランスフォーマーは、名前だけ聞いたことがありますがあまり詳しくないですね〜（´･ω･`） (2021年3月20日 22時) (
レス) id: 1bc4b1a0b4 (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(；ﾟ∀ﾟ)(プロフ) - 星猫さん» すみません(＞＜) とても嬉しいのですが、思うように時間が取れないので迷惑をかけてしまうかもです…… (2021年3月20日 22時) (レス) id: 1bc4b1a0b4 (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(；ﾟ∀ﾟ)(プロフ) - 星猫さん» 私東方はあまり詳しくないんです(￣▽￣;) でも、魔理沙や咲夜が好きです笑チルノも可愛いですよね！ (2021年3月20日 22時) (レス) id: 1bc4b1a0b4 (このIDを非表示/違反報告)
雪華 - トランスフォーマープライムは知っています？ (2021年3月16日 8時) (レス) id: 1286db9797 (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - それと、一緒に合作しませんか？ (2021年3月16日 8時) (レス) id: e8084d140d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ココナッツ(；ﾟ∀ﾟ) | 作成日時：2021年3月15日 22時
