16ｰ1 眠り姫と熊殺し【吹雪アツヤ】 ページ36
「Aさん、見てごらん。今日もサッカー部、張り切ってるわよ」
そんな先生の声で、夢うつつの境界線でさ迷っていた私は、その寝ぼけ眼を擦ってゆっくりとベッドから起き上がった。
…まだ、少しだけくらりとする。
揺らめく視界の中、その視線を窓の外へと向ければ、今日も一つのボールに対して真剣に、かつ楽しそうに向かって走るサッカー部員の姿が見えた。
「楽しそう」
いつからだろう。
こんな風に、サッカー部を眺めるようになったのは。
確か、私が保健室利用者の常連になりかけてた時からだった気がする。
というのも、私は元より身体が丈夫ではない。
だから、こうして保健室に度々お世話になっている。
そんな私に密かについた異名は、"白恋中保健室の眠り姫"
…あまりにも不本意だ。
「いいな…私も、あんな風に…」
「なりたい、のか？」
突然、誰かが首から上だけを窓からひょこっと覗いてみせた。
必然的に彼と向かい合わせになり、目が合う。
「あ、姫だ」
「……」
私はその人を知らなくても、その人は私のことを知っている。
名前じゃなくて、異名の方で。
いくつかそういうパターンは経験してきた。
だからもう慣れている。
「どうも」
と、窓を閉めようとすると、ちょっと待てよとその人は焦りを浮かべた表情で、私の手を止めた。
「なあお前」
「何ですか」
姫呼ばわりされたり、挙句お前だなんて指されたり。
初対面で名前を知らないとはいえ、つくづくこの人は失礼極まりない。
「外、出ねえの？」
「…外、出れないの。今」
今にも窓から入ってきそうな勢いで身を乗り出す彼は、さっきまで私が眺めていたサッカー部の人達と同じ格好をしていた。
「こら、吹雪くん。Aさんは具合悪いんだから無理やり外へ引っ張ろうとしないの」
と、今まで黙っていた先生が口を開いた。
「Aって言うんだな…」
なぞるように、吹雪くんは私の名前を口にする。
「吹雪くんって言うんだ」
ここで私も彼の名前を知る形になる。
「おう」
名前を呼ばれた彼は、さも嬉しそうにはにかんだ。
名前呼んだだけなのに。変なの。
「ところで、さっきまでそこのグラウンドにいなかった？瞬間移動でもしてきたの？」
グラウンドを指差し言うと、彼は違うと首を横にふった。
「それ、俺の兄貴と間違えてねえか？」
「お兄さん、いるんだ？」
「知らなすぎだろ、俺らのこと」
きょとんとする私に、吹雪くんは目を丸くした。
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Setsuki.(プロフ) - 風丸の話の時に彗星ガールズの歌詞の一部があって感動しました！← (2019年3月28日 21時) (
レス) id: 77812d9344 (このIDを非表示/違反報告)
Zero - 彼方さん» 有難うございます(感涙)！ (2019年3月17日 10時) (レス) id: fec557507a (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - Zeroさん» リクエストありがとうございます！話数の関係でもしかしたら次の小説に移動しちゃいますがまたその都度更新させていただきますね(*´`) (2019年3月16日 19時) (レス) id: 35021d0064 (このIDを非表示/違反報告)
Zero - リクエストお願いします!!難しいと思いますけど､不動さんって書けますか?無理だったら全然良いです!! (2019年3月16日 15時) (レス) id: fec557507a (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - 妄想乙娘さん» 全て読んでいただけたんですね！(；＿；)とても嬉しいです！これからも頑張ります！ありがとうございます(〃´-`〃) (2019年3月12日 21時) (レス) id: 35021d0064 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：彼方 | 作成日時：2019年3月4日 8時
