07-やっと聞けた ページ7
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「お前、こないだの……」
「えっ」
「今日は塾って訳じゃなさそうだなァ?
一丁前に粧し込んでよォ」
意地悪そうに警官の目が私を捉えて細められる。
それすらも何だかわからないけどキュンとした。
気付いてくれた。私の事覚えててくれた。
その事実がとてつもなく嬉しくて思わず頬も緩む。
「もう22時過ぎてんぞ。
今日は見逃してやるからお前ら早よ帰れェ」
「え? どーいう事? A、知り合い?」
「別に知り合い、では……」
助けを求めて、ちら、と警官を見上げる。
すると腕を組んでいた彼が私の視線に気付いて、「へェ?」と口端を上げた。
「この間家まで送ってやったってのに冷てェな?」
「え、A…まさか…!」
「ち、違う! ちょっと!
お兄さんも変な言い方しないでよ!」
「別に間違ってはねェだろォ」
面白そうに笑う目の前の好きな人。
やめて、笑わないで、ずっと仏頂面で居て。
不審ながらも、友達が駅に向かって歩き出す。
だけど私だけはその場から動くことが出来なかった。
「…お前は行かねェんか?」
「……っいや、帰りたくない」
「 また補導されてェのか。
見逃してやるっつってんだろォが」
「〜〜っ見逃さないで、」
「はァ?」
勢いで掴んだ警官の服の裾。
商店街の端っこでなにやってんだ、私。
うまく警官の顔が見れなくて俯いたまま。
呆れたような声が降ってきてじくじくと胸が痛む。
だってまだ離れたくないの。
せっかくまた会えたのに。
「……お前はつくづく変わってんなァ。
真面目なんだか阿保なんだか…」
「なっ阿保なんかじゃ…!」
思った以上に優しい声が頭の上に置かれて、ばっと勢いよく顔を上げた時、間近に整った顔があった。
その警官も少し腰を折って屈んでいた。
「良いから高校生は大人しく帰れ」
「……っ待って。帰るから…
名前だけ! 教えてよ、」
「…ハァ」
面倒くさいって、思われてるんだろうな。
私だってわかってる。でもここで引き下がれない。
どうしても知りたい。
この目の前の警官の事、もっと、もっと。
「…………実弥」
「え、」
「オラ、お前の友達も待ってくれてんじゃねェか
俺に捕まったらタダじゃ済まねェぞ」
強い力で肩を掴まれてから、ぐいっと回れ右される。
「じゃあな」と、私達の事を見送る前にさっさと夜の闇に消えていってしまった。
…__実弥。
「…もう実弥に捕まってるよ」
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k - おそらまめさあああああああん、、(4回目)いや、あの最高でした。胸きゅんってこういうことを言うのですね、、やはり実弥のかっこよさは最高ということですね。(?) (6月15日 23時) (レス) @page46 id: 5d2f3eba17 (このIDを非表示/違反報告)
ha0824du(プロフ) - 赤の他人で恐縮ですが言わせてもらうと文才すぎやろ〜才能爆発やん!の二言です。ありがとうございます。はい。 (2022年10月6日 22時) (レス) @page46 id: 0233a38cc7 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 39ページ 舌を見ると の 舌 は 下 ではないでしょうか? (2021年6月4日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - Lunaさん» Luna様、最後までご愛読ありがとうございました!最後は少し駆け足になってしまいましたが、胸きゅんお届けできて嬉しいです(^^)かっこいい実弥さんは永久不滅です! (2021年5月29日 1時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
Luna(プロフ) - はじめまして。胸きゅんの素敵なお話ありがとうございました。実弥さんかっこよすぎましたっ!! (2021年5月28日 16時) (レス) id: acb6885805 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年10月22日 21時