初恋キラー実弥警官【鬼滅の刃】

28-憎らしい ページ28

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談笑しながら正門に向かっていると、何故か混んでいた道が戸惑う様に真っ二つに分かれる。それも、私たちを分かれ目にして。





「え、何？」

「誰かこっちに向かってくるー」





呑気な炭彦君の声が遠くなる。

向かってきてるのは、散々見て覚えたあの警官服。
彼は真っ直ぐ私だけを見ていた。





「さね、んむっ」

「交番からお届け物だァお嬢さん」





Aを呼ぼうとしたのに、大きな手が私の顎から鼻まで覆って口を塞がれた。


彼が持っていたのは探していたハンドクリームだった。

それを器用に私の手の中に入れると、私の手ごと包み込んで制服のカーディガンのポケットに突っ込まれた。


有無を言わさず私を睨む実弥は、一体何を考えているのか見当もつかない。





「あ、いつも朝追いかけてくる……」

「…奇遇だなァ坊主ゥ……本当は今すぐしょっぴいてやりてェが生憎此奴に用があるんでなァ
今回だけは見逃してやる」

「そのハンドクリーム……Aが探してたやつ？
Aと知り合いなの？」





押さえる気の無い緩まった手を両手で引き剥がす。
驚いた顔の実弥を一瞥して、私は真っ直ぐ炭彦君を見上げた。





「知り合いじゃない。この間補導されただけ」

「…！」

「ふーん、そっかー」





その言葉と共に私は実弥の手を突き放した。
肩越しでもわかる、実弥の驚いた様子。

だんだん冷えていく心と体に気付かないフリして、私は炭彦君から目を離さなかった。





「…ごめん炭彦君、お巡りさんが用事みたいだから、また明日一緒に帰ろ」

「…うん、いいよー」

「ばいばい」





ふにゃりと柔らかい笑顔を後に、私は背中に立つ彼を無視するみたいに歩き出した。

当然、私の後を悠々と追いかけてくる警官。





「なァ。オイって」

「……」

「A。こっち見ろ」





これでも死ぬ程早歩きしているのに。
余裕綽綽とその長い足を生かして私の隣を歩く実弥が少し憎らしい。


　人通りの少ない路地に曲がった時、辛抱切れたのか、彼に左肩をぐいっと掴まれた。





「年上の呼びかけに無視とは関心しねェな」

「っ…お巡りさんが乱暴するのも良くないですよ」

「ア？ これは補導してんだ」





半ば強引に彼の方に身体を向けられる。
正面で向き合う事になって、咄嗟に下を向いた。彼と目が合わない様に。
　だけどそれを分かってる実弥は私の顎を掴んで顔を上げさせる。

昨日ぶりの実弥は、やっぱり今日もキラキラしている。




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