23-クリスマス ページ23
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「あ、…これは」
「言い訳しないで。塾から電話がかかってきたわ
休むなんて今まで一度もなかったのに」
「違うの、私…」
「あの男に誑かされたのね。そうでしょう?」
「え」
見上げてママの顔色を伺う。
ママは私を冷たく見下ろして睨んでいた。
ローファーから靴下に染み込む雨が冷たい。
「ママ、まさか…見てた?」
「明らかに歳上だったじゃない
人の目もある中あんなに近づくなんてどうかしてる」
「聞いて、ママ。あの人は私の…」
「やめて。ママに下品な話を聞かせないで
どうせろくに勉強もせず遊んでる大学生だわ」
怒りなのかそれとも焦りなのか、怖いのか、分からないけど荷物を持つ手が震える。
何より実弥を馬鹿にした言い方にどうしようもなく腹が立った。
「…彼はそんな人じゃない」
「だったら何だっていうの?
学のある子なら家の前であんな事しない」
「……実弥は警察官だもん!」
「何ですって?」
ママの目が吊り上がる。
鬼の形相をした彼女に「だったら尚更許さないわ」と私の紙袋を奪い取られた。
「警察官も政府の役人と一緒よ
結ばれて結婚したって結局は同職の女を取っ替え引っ替え…子供も放ったらかしで自分は楽しいことしかしないもの
貴方だってどうせ捨てられるだけよ」
「…っそれはママの体験談でしょ!」
怒りに身を任せて、咄嗟にそんな言葉が口から飛び出した。
しん、と静まり返る玄関。
ママの靴しか置かれていない広い玄関の床を見つめて、しまったと唇を噛む。
「……親に向かってなんて口きくの
それもこれも全部あの男のせいだわ…!」
「っ、ごめんなさい…」
「良い事! これはママが代わりに返します
Aはこれからもう二度と! あの警察官に関わらないと約束しなさい」
悔しい。悔しいけど頷くしかない。
震えた体をママは柔らかな手で包み込む。
結局私は、この手には逆らえないんだ。
これからもずっとママの言いなりになるのかな。
「…お腹空いたでしょ、着替えてらっしゃい」
「……うん」
「今日はAの大好きな料理ばかりよ」
「うん…」
確かに言われてみれば私の大好きな匂いがする。
チキンにカボチャに…ピザ。
だけど食欲がそそられないのは今のやり取りのせいだ。
重い足で階段を上った途中で、ママが私の名前を一度だけ呼んだ。
「メリークリスマス」
その言葉を聞きたかった相手は他に居たのに。
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k - おそらまめさあああああああん、、(4回目)いや、あの最高でした。胸きゅんってこういうことを言うのですね、、やはり実弥のかっこよさは最高ということですね。(?) (6月15日 23時) (レス) @page46 id: 5d2f3eba17 (このIDを非表示/違反報告)
ha0824du(プロフ) - 赤の他人で恐縮ですが言わせてもらうと文才すぎやろ〜才能爆発やん!の二言です。ありがとうございます。はい。 (2022年10月6日 22時) (レス) @page46 id: 0233a38cc7 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 39ページ 舌を見ると の 舌 は 下 ではないでしょうか? (2021年6月4日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - Lunaさん» Luna様、最後までご愛読ありがとうございました!最後は少し駆け足になってしまいましたが、胸きゅんお届けできて嬉しいです(^^)かっこいい実弥さんは永久不滅です! (2021年5月29日 1時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
Luna(プロフ) - はじめまして。胸きゅんの素敵なお話ありがとうございました。実弥さんかっこよすぎましたっ!! (2021年5月28日 16時) (レス) id: acb6885805 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年10月22日 21時