14-ささやかな祈り ページ14
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友達の何気ないコメントにぼうっとしながらも一応鞄の中を確認する。
あー…しまった。折り畳み傘忘れた。
携帯に搭載されている天気予報を見ると、夕方から40%だった。
まあ、40%なら大丈夫か……。
「A、明日梅ちゃん家でクリパするでしょ?
体調悪かったら違う日にする?」
「ううん、大丈夫。寝たら治ると思うから」
この1週間、心の隅で期待を抱きながら公園に入り浸り続けて居たけど、結局7日間一度も実弥に会うことは出来なかった。
多分避けられてる。
それはいわゆるガキの私でも察せられた。
……それでも、待ち続けるしか出来ない。
彼が許してくれない限り私が実弥に会う権利はないと思ったから。
「_それじゃ明日ね! 12時集合よ!」
「はーい! またね!」
若干曇り空の下、午前で終わった授業で、私は友達に手を振って靴箱から靴を取り出す。
ローファーが一層冷たい。
今日はブレザー一枚で、マフラーだけが私の防具だ。
電車に揺られて最寄駅に着く。
マフラーに顔を埋めながらもう習慣にさえなってしまった寄り道をする。
「……っさむ、」
珍しくブランコが空いていた。
いつもなら子供達がこぞって取り合いする大人気の遊具なのに。
折角だから、とブランコに座ると意に反してゆらゆらとブランコが揺れ動く。
子供が今日は少ないなあ。
ちらほらグラウンドの方で走り回っているのが数人だけ。
そりゃ寒いと外に出たくもないか。
「……ふ、何やってんだろ、私」
遠くでクリスマスの宣伝が聞こえる。
明日は待ちに待ったクリスマスだ。
今年は皆でクリパして、プレゼント交換をして、夜はママと一緒に美味しいご飯を食べて……。
鼻頭に、ちょん、と何かが触れた。
ひんやりとするそれに気付いて見上げると、それを合図に曇天からぽつぽつと滴が降り始める。
「……雨……」
最悪、本当に降っちゃったんだ。
このままじゃ本当に風邪ひいちゃう。
そう思っているのに体は動かなかった。
徐々に雨を吸って重たくなっていく服に、私の腰も重くなっている様だった。
風邪、引くの嫌だな。
せめて明日はいい日が良いな。
実弥。会いたい。
その直後、あんなに激しかったにわか雨が止んだ。
顎から滴り落ちる滴をそのままに、緩慢な速度で顔を上げる。
私の頭上には、見慣れぬ広い傘と……私の今一番会いたくて堪らない彼が立っていた。
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k - おそらまめさあああああああん、、(4回目)いや、あの最高でした。胸きゅんってこういうことを言うのですね、、やはり実弥のかっこよさは最高ということですね。(?) (6月15日 23時) (レス) @page46 id: 5d2f3eba17 (このIDを非表示/違反報告)
ha0824du(プロフ) - 赤の他人で恐縮ですが言わせてもらうと文才すぎやろ〜才能爆発やん!の二言です。ありがとうございます。はい。 (2022年10月6日 22時) (レス) @page46 id: 0233a38cc7 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 39ページ 舌を見ると の 舌 は 下 ではないでしょうか? (2021年6月4日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - Lunaさん» Luna様、最後までご愛読ありがとうございました!最後は少し駆け足になってしまいましたが、胸きゅんお届けできて嬉しいです(^^)かっこいい実弥さんは永久不滅です! (2021年5月29日 1時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
Luna(プロフ) - はじめまして。胸きゅんの素敵なお話ありがとうございました。実弥さんかっこよすぎましたっ!! (2021年5月28日 16時) (レス) id: acb6885805 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年10月22日 21時