15-雨と共に ページ15
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睫毛にかかる滴を適当に拭って、瞬きして目の前に佇む彼を見上げる。
不機嫌そうに背中を濡らす警察官のお兄さんは、ぶっきらぼうに私のために傘を差してくれていた。
「……お前、本当何やってんだァ……」
「…どうしても、会いたい人が居て」
「…ハァ………」
それが誰かなんて言わなくても彼にはお見通しだった。
傘の上でボツボツ激しい降水を知らせる雨のせいで、お互いの声が聞き取りづらい。
するとグローブ越しの大きな手が、私の濡れた手を手繰り寄せて傘を持たせようとしてくる。
「傘、やるから。もう帰れェ」
「もう濡れてるから、いらない
お兄さん、濡れちゃう」
「何だそれ…本当お前……」
実弥、なんて、振られた今更気安く呼ぶことなんて出来なくて、でも名字だって知らないし、お兄さんと呼んだ。
自分で招いた結果なのに、だめだ泣きそう。
雨が降っていて良かった。泣いても隠してくれる。
不意に強い力で手首を引っ張られた。
びっくりして反射的に実弥の顔を見てしまう。
ばちっと目が合った時の久しぶりに見た実弥は見たこともない位怒っていた。
「おに、さ……、」
「良いから行くぞ」
無理やりブランコから立ち上がらせられて、側に置いてあった私のスクバも引ったくって私を引っ張る実弥。
その顔が窺えないまま私は濡れた背中を見つめながら着いて行くしかなかった。
バンッ
半ば拉致される様に白のスマートな4人乗りの車の後部座席に投げ込まれる。
何が起きているのか全く理解できないまま放心していると、次には運転座席の扉が開いて実弥が乗り込む。
「えっ……え…?」
「お前は連行だァ」
「え…!?」
「……放っといたら何するか分かんねェ」
ばさっと投げつけられた少し重たい服。
よく見ればこれは実弥の制服のジャケットだった。
困惑していると「羽織っとけ」なんて冷たい声が飛んできた。
…あ、私が、濡れてるから……。
「_あァ、すいません。……区交番巡査、不死川ですが。…巡査部長スか? すんませんけどォ、俺このまま直帰しますわァ」
赤信号の時に手短に済ませた電話。
名字…不死川って、言うんだ。
そろそろと見ていたのがバレたのかミラー越しに目が合う。
相変わらず殺気に満ちた目をしていた。大人しく私はシートを濡らすだけ。
「オラ、着いたぞ」
「っ着いた、って、」
土砂降りの雨の中、到着したのは大きなマンション。
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k - おそらまめさあああああああん、、(4回目)いや、あの最高でした。胸きゅんってこういうことを言うのですね、、やはり実弥のかっこよさは最高ということですね。(?) (6月15日 23時) (レス) @page46 id: 5d2f3eba17 (このIDを非表示/違反報告)
ha0824du(プロフ) - 赤の他人で恐縮ですが言わせてもらうと文才すぎやろ〜才能爆発やん!の二言です。ありがとうございます。はい。 (2022年10月6日 22時) (レス) @page46 id: 0233a38cc7 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 39ページ 舌を見ると の 舌 は 下 ではないでしょうか? (2021年6月4日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - Lunaさん» Luna様、最後までご愛読ありがとうございました!最後は少し駆け足になってしまいましたが、胸きゅんお届けできて嬉しいです(^^)かっこいい実弥さんは永久不滅です! (2021年5月29日 1時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
Luna(プロフ) - はじめまして。胸きゅんの素敵なお話ありがとうございました。実弥さんかっこよすぎましたっ!! (2021年5月28日 16時) (レス) id: acb6885805 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年10月22日 21時