36-教科書には載ってない ページ36
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あまり自炊しないのか、閑散とした冷蔵庫の中から何とか卵と醤油だけを見つけ出す。
昨日炊いたのだろう冷ご飯が炊飯器の中に残っていたので、それも借りて、探し出した土鍋の中に入れてぐつぐつ煮込む。
「実弥ー…」
「ん…」
「寝てる? 雑炊出来たけど…」
「…食う」
食器の置き場所は分からなかったので、コンビニで貰ったプラスチックのスプーンを出して実弥に渡そうとする。
しかし頑なに受け取ってくれない様子に、食べさせて欲しいんだなぁ、と自然に察した。
「熱いよ」
「いける」
「どう? 味薄い?」
「大丈夫だァ…」
ゆっくりと咀嚼して雑炊を半分まで平らげたところで、実弥は身を引いた。
ご飯を食べたからか、さっきよりも随分顔色が元に戻った気がする。
余計なおせっかいをかいちゃったかな。
もしかしたら実弥も、一人の方が気楽に過ごせてたかも。
「_実弥、ごめんね」
「……」
横たわった彼が、何も言わず私を見る。
今の謝罪は、今日の事だけに対してじゃない。
「一昨日はわざと冷たく当たったの…。
……服も黙って返してごめんね」
「……あァ」
「……ママに、言われたの
実弥と関わっちゃだめだって…実弥と関わると、勉強が疎かになって私が良い子じゃなくなるんだって」
今日だって土曜の塾があるけど休んでしまった。
きっと今頃、家に連絡がいってる筈。
「約束破ると、今度こそママは許してくれないって、そう思ったから……
だから、一昨日実弥を、わざと傷つけた」
「あァ」
「でも、私は、本当は」
いつもより弱い力が私の腕を軽く引っ張ってベッドに傾ける。
ぽすんと柔らかい音と共に私は実弥の熱い胸の中に収まっていた。
薄い布越しに、実弥の心音がどくどくと聞こえてくる。
「俺達の間には、何の障害も無ェから……お前はいつでも、俺にお前の話をしろ」
「……へ、」
「俺は口下手だと自負してるし、経験も浅いから女の喜ぶ事にも疎いが、好きな女子の事は何でも知りてェ
お前はただ会話がしたいと言ったが……したいなら、すれば、いいだろ
俺はいつでもお前の話が聞きてェから」
信じられない言葉を、貰った。
「……俺は」声が出ない私に、実弥は耳元で囁く。
「警察官だから困ってる奴が居たら、助ける
__けどお前の事は、……俺だけが、守ってやりてェんだ」
「この意味、分かってくれるな?」
勉強ばかりしていた私に、答えが出された。
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k - おそらまめさあああああああん、、(4回目)いや、あの最高でした。胸きゅんってこういうことを言うのですね、、やはり実弥のかっこよさは最高ということですね。(?) (6月15日 23時) (レス) @page46 id: 5d2f3eba17 (このIDを非表示/違反報告)
ha0824du(プロフ) - 赤の他人で恐縮ですが言わせてもらうと文才すぎやろ〜才能爆発やん!の二言です。ありがとうございます。はい。 (2022年10月6日 22時) (レス) @page46 id: 0233a38cc7 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 39ページ 舌を見ると の 舌 は 下 ではないでしょうか? (2021年6月4日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - Lunaさん» Luna様、最後までご愛読ありがとうございました!最後は少し駆け足になってしまいましたが、胸きゅんお届けできて嬉しいです(^^)かっこいい実弥さんは永久不滅です! (2021年5月29日 1時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
Luna(プロフ) - はじめまして。胸きゅんの素敵なお話ありがとうございました。実弥さんかっこよすぎましたっ!! (2021年5月28日 16時) (レス) id: acb6885805 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年10月22日 21時