3個目 ページ3
.
「今日はなんとですね、センラずキッチンの再演ですよ」
「お、まじ?そっか、昨日からどっちも出張だったっけ」
「そういうことや。ま、美味しいもん食わせたるから期待しとき?」
車の中で行われる日常会話。
センラと私は兄妹だ。………血の、繋がっていない。
数年前から一緒に暮らすようになったものの、どちらの親も仕事が多忙で4人揃ってる時なんて片手で数えられるくらいしかない。
むしろ、どちらも家にいない時の方が多い。
それでも家が心が休まる場所になっているのは、センラのおかげ。
血は繋がっていないけれど、本当のお兄ちゃんのように慕っている。
「はい、とうちゃーく。先行って手洗って着替えとき、そしたら俺の手伝いお願いしてええ?」
「うん、分かった」
このように、センラはとてつもなくお母さん気質だ。
それを本人に言うと怒るけど、正直こればかりは譲れない。
部屋着に着替えた後、センラがいるキッチンの方へ向かう。
下ごしらえは私の迎えに来る前に済ませていたのか、これだけでもおいしそうな食材たちが並んでいた。
「センラー。私何すればいい?」
「ほなこれとこれ鍋に入れて煮込んどいてー?」
「おっけ!」
「ん、ええ返事」
そう言ってセンラは私の頭をぐしゃぐしゃと撫でてくる。
子ども扱いされてるみたいだけど、大きくて暖かいセンラの手が私は大好きだ。
.
「なー、A?」
ご飯もお風呂も済ませて、テレビを見ながらだらだら過ごす時間。
ソファに座りながらリラックスしていると、後ろからセンラの声がかかった。
「何?」
「彼氏でもできたん?」
「はい!?」
唐突な質問に咳き込みそうになる。
大声だけで抑えた自分を褒めてほしい。
何か悪いものでも食べたのかと後ろを振り向けばそこにいるのは普段通りのセンラ。
私の過剰な反応に笑いをこらえてはいるけれど。
「いやあ、なんかいつもと様子が違ったからなんかあったんかなあって。……で、どうなん?」
いつもと様子が違う、のは絶対に浦田くんのせいだろう、間違いない。
でも浦田くんは告白はされたけど彼氏じゃない。
残念だったなセンラ、期待通りの返答ができなくて。
「んーん、いないよ」
「ほんま?あー良かったあ、俺Aに彼氏できても祝えへんもん」
……今、聞き捨てならない言葉が聞こえたような。
1186人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
瑠璃色(プロフ) - コメント失礼します!すごい甘くて溶けそうでした…楽しく読ませていただきました! (2020年1月22日 4時) (レス) id: c270fd437e (このIDを非表示/違反報告)
夏乃(プロフ) - コメント失礼致します! とてもドキドキしながら作品を読まさせて頂きました!メンバーそれぞれのお話もワクワクドキドキでした!お話の途中からまさか4人は裏で繋がっていたりして…!と予想したりしていて楽しかったです! (2018年10月5日 3時) (レス) id: 18d0eaa0c8 (このIDを非表示/違反報告)
史緒(プロフ) - maikanoさん» コメントありがとうございます!各ルートはいつか形にしたいなとは思ってるので気長にお待ちください!maikanoさんが少しでもドキドキできるようなお話を届けられて良かったです、見ていただきありがとうございました! (2018年10月4日 0時) (レス) id: 5df9928a5a (このIDを非表示/違反報告)
史緒(プロフ) - 瀬菜(せな)さん» わーありがとうございます!何とか完結できて良かったです…!!新作公開しましたのでお時間ある時にでもよかったら除いてやってくださいー! (2018年10月4日 0時) (レス) id: 5df9928a5a (このIDを非表示/違反報告)
maikano - とても面白かったです!欲を言うと全ルートみたいですね…(全員から愛されるルートとか、うらたんルートとか…)読んでてすごくドキドキしてものすごくよかったです! (2018年10月3日 15時) (レス) id: f3f6e9dc4d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:史緒 | 作成日時:2018年9月10日 22時