【あんスタ】文学少女と偶像 (ページ1)

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一冊目ページ1

ここは夢ノ咲学院。

アイドルの卵が夢を馳せる場所。

────────さて、それはいつの栄光の話？

此処の何処に夢がある？

光がある？

未来がある？

否。何処にもありはしない。

流され行くままに、堕落の限りを尽くしている。

─────────────────────────

『然しながら、私もそれを肯定している側の人間である。』

来年に新設が検討されているプロデュース科のテスト号を迎え入れる、その前段階として、私が導入された。

『本を読めればそれでいい』

そう言って承諾をした気がする。もう記憶にない。

『缶に雑誌に…これは何だ？煙草か？』

酷い有様だ。褒める所か、呆れすら浮かんでしまう。
堕落が良いとは言うものの。限度があるものだろう。

『踊り場は蟻の巣窟か？』

「やはり、変えるべきだと思うよね。」

思わず息を飲んでしまう程に、綺麗な薄い金色の髪を揺らす男が言う。

『…難しいだろう。人々に根付く習慣というのは、一度染み付いてしまえば、簡単には落ちない。』

「落ちたら苦労しないよね。どうするべきだと思う？」

『理由を付けてしまえばいい。』

「理由？」

『誰かのせいにする口実だ。堕落を人に擦り付けてしまえば、【自分は此奴らとは違う】と嫌でも意識するだろう。』

見とれてしまう前に、咄嗟の案を出した。
苦し紛れではあるが、初対面に対して見つめ続けるのは失礼に値する。何とか立て直せたようだ。

「”悪”を生み出す、か。」

『……………ここまで提案をしておいて、非常に言いづらいんだが、私はこの現状を肯定しているんだ。』

「へぇ、何で？」

『自由な時に、自由に本が読める環境であるから。』
『且つ、この状況が多数の人間の幸福であるならば、肯定する他ないと考えている。』
『かと言って、床にゴミを撒き散らす事を良しとする気は無い。そんなただの我儘だ。』

「この学校には図書室があるけれど？」

『とても使える状況には思えなかったが？』

「そうか……」

金髪の男は、ハッとした様に顔を上げる。
私の目線も上がる。

「一緒に、この学校を変えよう！」

苦しめ、そして、苦しむのだ。それが人間の当然の生活なのだから。

〜『悪妻論』坂口安吾〜