17(Yside) ページ17
『俺だけ生き残ったんだぞ。お前は死んで…俺だけ…』
拳を握りしめ苦しげに俯く太輔に、メンバーは誰も声を出せなかった。
だって、太輔の辛さが分かるから。
同じ事故に会い、一人だけ生き残った太輔。
しかも相手は、仲間であり戦友であるシンメのミツだ。
最近では2人表立って、イチャイチャ絡んだりはしなくなったが、深い所で分かり合う…心を通わせ合ってる者同士。
太輔の苦しみは、きっと俺達の想像以上だろう。
今にも泣き出しそうな太輔に、ミツは口調を厳しくして言った。
「…だからこそ、お前は戻るんだよ。お前は…戻らなきゃいけないんだ。」
ミツの言葉に太輔が縋るように顔を上げると、堪え切れない涙が太輔の頬を伝った。
ミツの思い…
太輔の気持ち…
痛いほど分かった。
だからこそ、俺達はただ2人を固唾を呑んで見守る事しか出来ない。
そんな俺達に痺れを切らしたように、ミツが言った。
「横尾さん、マネージャーに連絡して。」
「え?」
「マネージャーに伝えて。藤ヶ谷はもう大丈夫だって。」
「ミツ…」
どんどん話を進めていくミツに戸惑いを隠せない太輔を気遣い、玉がミツを柔らかく制止する。
でも…
「大丈夫だよ。お前らがいる限り、藤ヶ谷は大丈夫。」
ミツは笑って俺達に頷いた。
ミツが言ったら…そんな気がしてくるのが不思議だ。
そうだよ。
俺達は、動き出さなきゃいけない。
俺達が願い、夢見た再出発へ…
「…わかった。連絡してくる。」
俺は、スマホを手に取り、部屋の外に向かった。
「藤ヶ谷、絶対、皆がお前を守ってくれる。メンバーを信じろ。ファンを信じろ。…俺を…信じろ。」
背後で…
ミツがそう太輔に話す声を聞きながら、俺は懸命に涙を堪えていた。
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作者名:MISA | 作成日時:2014年7月7日 16時