ゴール ページ34
まだ２月の終わり。
雪は降ってはいなくとも、濡れた私達の髪を凍らせるのには十分冷えていた。
もう暖かくすら感じる湖からハシゴに手を伸ばせば一瞬で冷える。
上から手を差し伸べるセドリックに同じく手を上げればぐっと引き上げられた。
水着の上からでも見える筋肉は私を軽々と持ち上げられるほどに鍛え上げられている。
先生方からたくさんのタオルと毛布をかぶり、ぺたりと座り込んだ。
ガタガタと異常なまでに震える私の体はもはやいうことを聞かなかった。
立ち上がろうとしても、腕を伸ばそうとしても縛り付けられてしまったかのよう。
後ろに引かれて包まれた。
審判と話していたセドリックは私の体を温めるようにピタリと体をくっつけ、上から毛布をかぶせて髪の毛をまとめあげてくれた。
徐々に温まる背中に安心してゆっくりと涙が頬を伝った。
「もう、大丈夫。
終わったから。」
耳元で囁かれた声はいつもより少し震えていた。
彼も寒いだろうに私を優先してくれている。
普段なら年長者としてどうかと思うだろうが、そんなことを気にしていられないほど弱っていたのか彼の胸に頭を預けた。
ザブリと湖面から人影が現れてびしょ濡れになったハーマイオニーとクラムが現れた。
水を吸って重くなったローブをクラムが脱がせてタオルと毛布で彼女を包んだ。
彼も筋肉のおかげなのか、ハーマイオニーよりは寒そうにしていない。
「真っ青よ」
いつの間にか横に座っていたハーマイオニーが私を見た。
彼女も唇を紫に染めていて、いつもは赤い頬から血色が消え失せていた。
『っあなたも、ね』
濡れたタオルがどんどん重く、冷たくなっていく。
彼の体温に触れている背中と手は暖かくとも足の方はどんどん冷たくなっていった。
途中棄権したフラーがこちらにやってくる。
もう帰ってきて長いのかバスローブ一枚で、髪は少し乾いていた。
私の顔色を見て察したのか彼女は新しいタオルと毛布で二人を包んだ。
ぐっしょり色が変わったタオルはカゴに入れられた。
「大丈夫ですか？
私も何かしてあげたいけれど…うまく魔法が使えないの」
ガブリエルと同じなまりかたのフラーは私の横でかがんだ。
長い間水に浸かってこれだけ冷えているのだ。
競技中はアドレナリンでどうにかなっても、外に出た途端疲れで力は出ない。
彼女は申し訳なさそうにそう呟いた。
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作者名：あやにゃん | 作成日時：2019年1月10日 2時
